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渡辺 真知子_海につれていって ◇ 2009年 07月 19日
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1970年代半ば頃、ユーミンや吉田 美奈子、尾崎 亜美といった優れた女性シンガー・ソング・ライターの出現によって、J-POPシーンに新たな風が起こりました。ただ当時、その風を感じることが出来たのはラジオというメディアに親しんできた一部の人間に過ぎなかったように思います。
しかし、1970年代も終盤に近づくとその風は大きなものとなり、広く一般人にも感じることが出来るようになりました。その追い風を起こしたのが、八神 純子と今回紹介する渡辺 真知子だったのではないかと思っています。
1970年代においてシンガー・ソング・ライターと言えば、フォーク系男性アーティストが主流で、女性シンガー・ソング・ライターは本当に少数でした。ユーミン、吉田 美奈子、尾崎 亜美等は確かに優れたシンガー・ソング・ライターですが、彼女達はTVに出なかったので広く世間に知られるところまでには至りませんでした。そんな中、八神 純子や渡辺 真知子は積極的にTVに出て、自作曲を堂々と歌うことで女性シンガー・ソング・ライターの存在をアピールした功労者であった気がします。

今回は個人的に素晴らしいソング・ライターとしての才能を持ち合わせた渡辺 真知子の1stアルバム『海につれていって』(1978年)を紹介します。
1977年11月のデビュー・シングル「迷い道」、1978年4月の2ndシングル「かもめが翔んだ日」とヒットを連発して、1978年5月に待望の本アルバムがリリースされ、当然ながら大ヒットしました。
このアルバムを改めて聴いてみると、渡辺 真知子のソング・ライターとしての才能は、職業作家にも勝るとも劣らないものだと感じさせます。
ユーミンや尾崎 亜美のように洒落たPOPSを書く訳ではありませんが、まだ"歌謡曲"というジャンルがしっかり残っていた当時において、渡辺 真知子の書く曲は歌謡曲チックであり、多くの人を魅了してきたことは明白です。
特に曲の構成が素晴らしく、1stアルバムにしてプロの風格さえ感じさせます。加えて、シングル用に曲とアルバム用の曲をきっちりと書き分けられるところも凄いの一言ですね。もちろん多くの渡辺 真知子の楽曲のアレンジを手掛けてきた船山 基紀の存在も大きいのは言うまでもありません。

『渡辺 真知子 / 海につれていって』
01. 海のテーマ ~ 海につれていって
02. かもめが翔んだ日
03. 片っぽ耳飾り
04. 愛情パズル
05. 私の展覧会
06. 迷い道
07. なのにあいつ
08. 今は泣かせて
09. 朝のメニュー
10. あなたの家

船山 基紀の作曲によるインスト・テーマからメドレー形式で始まる01。アルバム・タイトル曲でもあるこの曲は、スケールの大きいバラード曲です。渡辺 真知子のヴォーカルも堂々たるもので、これから続く楽曲に期待を持たせるにはぴったりの曲かも知れません。

大ヒット・シングル02。冒頭のフレーズだけで、聴く者に強烈なインパクトを与えるところなどは、プロの作家でも容易いことでは無いでしょうが、あっさりとこういう曲を書いてしまうところが凄いです。しっかりシングル向けに書かれた曲だというのが分かりますね。故・羽田 健太郎のピアノが凄いので注意して聴いてみて下さい。

何と形容して良いのか困るのですが、メロディーが印象的で個人的には大好きな曲のひとつ03。歌詞にも出てきますが、シャンソンの雰囲気を持っていて渡辺 真知子のヴォーカルとの相性も抜群の1曲だと思っています。

明るい感じのミディアム・ナンバー04。オーソドックスな構成の曲ですが、パート毎に耳に馴染んでくるメロディー・ラインを持っているのが特徴かも知れません。

ちょっとハードな水谷 公生のギターをフィーチャーしたAOR風なアレンジが印象的な05。この曲でもその優れた作曲センスを感じますね。珍しくバンド・サウンドを全面に出しているのですが、その演奏に負けないヴォーカルの力強さが良いです。

デビュー・シングル06。今更ですが、確かに名曲です。この曲も"現在・過去・未来"という冒頭のフレーズだけで、聴く者に強烈な印象を残しています。加えて歌詞の最後が"迷い道くねくね"というのも斬新ですよね。メロディーだけでは無く、歌詞も工夫されているあたりは並みの新人(もちろん当時の話ですよ)とは思えません(笑)

メロディーは好きなんですが、歌詞が暗過ぎる気がする07。渡辺 真知子のキャラクターに"死"というフレーズは似合わない気がするんです・・・と思っていたら、この曲は伊藤 アキラの作詞でした。ちなみにこのアルバムで伊藤 アキラが作詞しているのは02とこの曲の2曲です。

ファルセットを多用したヴォーカルが印象的な08。悲しく淋しい歌でありながら、どこかで前向きな感じがするのが渡辺 真知子の歌という気がするのですが如何でしょう?

羽田 健太郎のピアノ・プレイは素晴らしい09は、どこか可愛らしく微笑ましい曲です。アルバム中で最も幸福な感じが詰まった曲と言えるでしょう。何だかホッとしますね(笑)

しっとりとしたバラード・ナンバー10。シンプルな演奏に感情豊かなヴォーカルが胸に沁みる1曲です。どちらかと言えば地味な曲かも知れませんが、余韻を残すという点ではクロージングに相応しい1曲ではないでしょうか。

当時、八神 純子や渡辺 真知子はTVに出演する機会も多く、スケジュール的にはアイドル歌手なみの忙しさであっただろうことは用意に想像出来ます。それにこの頃は、シングル盤は年に少なくて2枚、多ければ4枚、アルバムは年2枚リリースするというのが当たり前の状況でした。殺人的なスケジュールの中で、レコーディングするだけでも大変なのに、曲も作っていたというのが凄いですよね。
現在では脚光を浴びることは少なくなったとは言え、現在でも現役で頑張っていられるのは修羅場をくぐってきたタフさと、やはり素晴らしい才能があってこそなんだと思いますね。
私にとってこの頃の音楽は、今も尚輝き続けており、ワクワクさせてくれます。本当に音楽を聴くのが楽しくて仕方がなかった時代でした。
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by kaz-shin | 2009-07-19 00:02 | J-POP | Trackback | Comments(8) | |
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Commented by Thunderer at 2009-07-19 02:22 x
kaz-shinさん、こんばんは。
やはり、このアルバムがやって来ましたか。

今、この記事みながらこのアルバム聞いてました。
どっちかというと他のアルバムのほうがよく聞いていたんですが
このアルバムもなかなかいいんですよね。
シングルの曲をのぞくと「片っぽ耳飾り」が一番かな。
「海につれていって」も捨てがたいんですけど。

ところで、渡辺真知子さんって「海」とか「港」ってイメージが
強いんですけど、(曲に使われることが多いからかも)
どう思われます?
Commented by kotaro at 2009-07-19 07:31 x
お早うございます。蝉が五月蝿いので目が覚めました。
石油ショックの後、今のような高層建築が少なかったころ、
都市論として目についたのは出口としての港、イメージとして背景に
ある海、自由に生きる生き物としての象徴 カモメ、
このあたりに新しさを感じた時代だったのではないでしょうか。

カモメは浅川マキや加藤登紀子の時代ですと、美空ひばりの頃の
延長で港のきまぐれな船乗りの心情のイメージでした。これを
がらりと変えたのは、洋書の「カモメのジョナサン」のブームです。

「とりあえず海の見える所」、に行くことは、自由への憧れと、何か新しい、若者のファッションに成長しました。
加山雄三の海は共同幻想(イメージ)だけれど、「横須賀ストーリー」の海は私小説(ストーリー)ですから。
私はこの頃の曲では鈴木茂のLPに入っている「トーキョー・ハーバーライン」がすぐれたセンスの曲だと推薦します。
本論に戻り渡辺真知子さんという新人歌手はクリエーターとして、当然このあたりのことを踏まえて自分の世界をコンポーズして登場しました。
だから売れたわけで、優秀な生徒が文章もうまくて、賞も取れた、
私はそんな風に時代を当時感じていました。
Commented by Apollo at 2009-07-19 23:28 x
kaz-shinさん、こんな作品を選ぶなんて、酷なっ!

私の大好きなこのアルバム、しっかり暖めてからレビューを書こうと思っていたのに、先を越されてしまいました。

だいたい、私とkaz-shinさんの音楽の趣味は、かぶるところがかなり多いんですよね。

遅れをとりもどさないと・・・!
Commented by Sugar Time at 2009-07-20 01:29 x
こんばんは!

先日紹介されていた八神純子さんの音源を入手して聴くこと数日・・・ちゃんと聴いたのは30年ぶりくらいですが、マジ鳥肌立ってます。
そして、今回の渡辺真知子さん。
私はまだ小学生でしたが、シンガーソングライターの走り(ご指摘のとおりユーミンなどを除き)として衝撃的だったことを覚えています。
当時好きな歌手は?と聞かれると渡辺真知子!と答えていましたっけ。

お二人とも、当時の歌番組に出てくる歌手の中では群を抜く歌の上手さでしたね。

70年代だし歌謡曲に毛が生えた程度、と自分に言い聞かせていたのですが、また聴きたくなりました。
聴きたいボーカリスト(年代)がどんどん広がっていきます。やば(笑)
Commented by kaz-shin at 2009-07-21 00:24
Thundererさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
渡辺真知子さんのような曲は最近ではあまり聴きませんね。
広い年齢層に支持される音楽だと思うのですが・・・。
最近の音楽事情では難しいのかも知れませんね。

渡辺真知子さんは、港町・横須賀出身ということもあって、"港"とか"海"は生活と密着していたんでしょうね。
だから作る曲にも"港"や"海"に絡んだものが多いのかも知れません。
Commented by kaz-shin at 2009-07-21 00:54
kotaroさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
"港"というのは、私の中では都会の一部というイメージがあります。
千葉県在住の人間にとって"港"は、工業地帯の中にあるもので都会的なイメージとは少し違うんですよ。
だから学生時代は、ユーミンやサザンの影響で"横浜"や"湘南"に憧れたものでした。
でも海を見に行こうと出かけるのは九十九里浜・・・(笑)
それでも海に囲まれた房総半島に住んでいるせいか、"海"にまつわる曲は曲は好きですね。

「TOKYO・ハーバー・ライン」は名曲ですね~。
1976年という時代でありながら、既にCITY POPの流行を予見していたかのような曲で、今聴くとその事に驚かされます。
Commented by kaz-shin at 2009-07-21 01:42
Apolloさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
Apolloさんも聴かれてましたか!
このアルバムのエントリーを楽しみにしていますね。
Commented by kaz-shin at 2009-07-21 01:50
Sugar Timeさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
70年代後半は侮れませんよ~(笑)
私にとって70年代半ば~終盤の音楽との出会いがなければ、音楽鑑賞という趣味は持たなかっただろうと思います。
新しいモノと従来からのモノとが平衡していた時代・・・。
今聴いても色褪せない作品が数多く存在しますので、色々聴いてみて下さい。
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