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Toshiki Kadomatsu vol.18_ALL IS VANITY ◇ 2007年 01月 11日
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現在進行中のアーティストに対し、こういう言い方は大変失礼な事だろうとおもうのですが、今回紹介する角松 敏生のアルバム『ALL IS VANITY』は、彼の現在に至るまでの数多いアルバムの中で最も完成度の高いアルバムだと私自身思っています。
もちろん、反論もあるでしょうね。事実、BOOK OFF等の中古店で1番目にするアルバムが、この『ALL IS VANITY』ですから・・・。しかもほとんどが250円位で売られてますしね(笑)

最初にこのアルバムを聴いた時に、正直なところ戸惑いはありました。1981年のデビュー・アルバム以降の80年代のアルバムが弾けた感じで「陽」とするならば、このアルバムは明らかに歌詞・メロディー共に「陰」といった感じがあります。しかし、角松自身の鬼気迫る程のサウンドへの拘りを感じ、アレンジャー・プロデューサーとしての才能が迸っていると感じたのは、このアルバムが初めてでしたね。
角松自身も相当な自信作だったと見えて、オリジナル・リリースの1991年から3年後の1994年(活動凍結中)にリマスタリングを施して再発した位ですから。角松のアルバムで唯一リマスタリングを施されたアルバムなんですね。ちなみにCD番号がBVCR-696がリマスター盤で、BVCR-40がオリジナル盤です。明らかに音は良くなってますから、聴き比べてみても面白いと思います。

このリマスター盤には、角松自身によるライナー・ノーツが付いていて、その中で角松は当時の音楽を取り巻く環境について「音楽で表現することの意味の混迷化やその精神文化的側面の欠落」と語り、「そのために人間の内面的な葛藤を歌ったり、アイロニー、アジテーションのような、ものが表現されはじめた」と語っています。そして、「その時できうる限りの贅沢なミュージシャンのラインナップおよび、制作方法でひとつの形にした」と・・・。簡単に言えば、それまでの角松 敏生の集大成として制作して、それまでの音楽性に決別を告げたアルバムといったところでしょうか。そんな気がします。

『角松 敏生 / ALL IS VANITY』
01. 夜離れ ~ YOU'RE LEAVING MY HEART
02. 夏回帰 ~ SUMMER DAYS
03. 海 ~ THE SEA
04. この駅から・・・ ~ STATION
05. ただ一度だけ ~ IF ONLY ONCE
06. ALL IS VANITY
07. UP TOWN GIRL
08. DISTANCE
09. 彷徨 ~ STRAY AT NIGHT
10. WHAT IS WOMAN

グラスに氷を落として酒を注ぎ、ZIPPOで煙草に火を点けるSEで始まる01は、ドナルド・フェイゲンの名盤『The Nightfly』に収録されている名曲「I.G.Y.」を彷彿させるナンバー。リック・マロッタ(ds)、ジョン・ペナ(b)、パウリーニョ・ダ・コスタ(per)に加え、おそらくクルセイダーズ以来の共演であろうジョー・サンプル(key)とラリー・カールトン(g)という贅沢すぎるメンバーで演奏され、ジョー・サンプルとラリー・カールトンのプレイに耳が釘付けになるナンバーです。
弾けていた頃の角松のサマー・ソングの色濃い02。イントロの唸るベースで鳥肌状態です。ベースは後藤 次利です。村上 秀一(ds)、鈴木 茂(g)、佐藤 博(key)、斉藤 ノブ(per)といった日本の音楽を支えてきたミュージシャンによる素晴らしい演奏を堪能出来ます。凄いと思ったのは、このアルバムが作られた当時の後藤 次利は、作曲家・アレンジャーとしての活動がメインで、ミュージシャンとしてベースを弾いていなかった時期だと思うのですが、角松はそんな次利を引っ張り出した。これには正直驚かされました。この曲での次利のベースは凄い!
01と同じメンバーで録音されたミディアム・バラード曲03。何も言いません。後半でのラリー・カールトンのギターとジョー・サンプルのローズによるかけあいを聴くだけでも価値のある曲です。
シングル・カットされた04。角松のシングル曲の中でもかなり好きな曲です。フジテレビ系ドラマ「旅情サスペンス」のテーマ曲に採用されました。故・青木 智仁のベース、佐藤 博のピアノ、本田 雅人のサックスが印象に残ります。
バジー・フェイトン(g)がカーク・ウェイラム(sax)が参加したミディアム・ナンバー05。ここではカーク・ウェイラムのサックス・ソロが渋いです。
アルバム・タイトル曲06は、かなり気合の入った演奏が聴けます。ジョン・ペナのベース、マイケル・ランドゥのギター・カッティング、カーク・ウェイラムのサックス・ソロ、そして圧巻はバジー・フェイトンのロック・フィーリング溢れるギター・ソロですね。凄い演奏です、この曲は・・・。
「それで最近どうなのよ?」が笑わせる07。好きですね、こういう軽さ。 むかつきますね、こういう高飛車な女の人は(笑) 角松にしては珍しいタイプの曲です。どうしても次利のベースに耳が行ってしまいます。
人気の高いバラード曲08ですが、個人的には苦手な曲です。私には重すぎますね。
ロック色の強いナンバー09。この曲のハイライトは、マイケル・ランドゥとバジー・フェイトンのそれぞれのギター・ソロを堪能出来るところでしょう。
このアルバム中で1番好きな曲が、この10です。それまで角松の書く詞になんの興味も湧かなかったのですが、メッセージ色の強い歌詞で唯一歌詞に共感出来た曲です。角松の作ったハチロクのナンバーでもピカ一の出来だと思います。間奏と最後のギター・ソロは外道の加納 秀人。素晴らしいソロを聴かせてくれます。佐藤 博のピアノはこの手のタイプの曲では外せませんね。そして、カーク・ウェイラムのサックス・ソロも堪能できる贅沢な1曲です。満員の通勤電車の中で、おもむろに化粧を始めるOLさんや、混んでるのに足の間にバックを置き、人が乗ってきても動こうともしない馬鹿女子学生さん達に聴いて欲しい1曲です(笑)

角松 敏生が曲を書き、アレンジして日米の贅沢すぎる面子を集めて、思い描いたサウンドを実現させたまさに素晴らしいアルバムです。角松が全身全霊で作りあげた渾身の作品で、ミュージシャンの起用も含め、プロデューサー・角松 敏生の才能の素晴らしさに感嘆せずにいられません。思い入れが強いアルバムだけに、レビューも長くなってしまいました(笑)
これを読んで興味を持った方がいらしたら、ぜひ聴いてみて下さい。特にFUSIONが好きな方にはお薦めです。BOOK OFFを探せば必ずみつかりますし、250円程度で購入できますから・・・。こんなに良いアルバムを低価格で買えるのですから良い時代なのかも知れませんね。
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by kaz-shin | 2007-01-11 00:05 | Toshiki Kadomatsu | Trackback | Comments(14) | |
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Commented by KINGO at 2007-01-11 00:34 x
かなりの思い入れがあるアルバムのようで・・・・・エントリー内容からソレがうかがえます。
確かに角松サウンドの分岐点となったアルバムだと思います。
俺の場合、このアルバムをはじめて聴いたとき、「おいおい角松、何処に行くんだヨ?」って印象でした。
今回のkaz-shinさんエントリーを見て、改めてジックリ聴いてみることにしました。

♪WHAT IS WOMAN・・・・・・ま、そのテの女子はイントロを聴いただけで間違いなく、聴くのを止めるでしょうけどネ。
Commented by kaz-shin at 2007-01-11 00:43
KINGOさん、こんばんは。毎度です。
曲そのものよりも、演奏面、サウンドへの尋常で無い拘りが好きなんですね。
角松さんの場合、一貫して演奏のクオリティは高いですが、このアルバムの演奏は凄いなといつも思ってましたね。
そういう意味で思い入れが強いですね。

>ま、そのテの女子はイントロを聴いただけで間違いなく、聴くのを止めるでしょうけどネ。
アハハハ、仰る通りかも知れませんね(笑)
Commented by しげぞう at 2007-01-11 01:01 x
こんばんは
BOOKOFFで¥250、淋しいけれど分からないこともないフクザツな心境
僕もこのアルバムは良いアルバムだと思います
しっかり「作品性」を感じます・・・
それにしても後藤次利のベース、めちゃくちゃ主張してますよね~
Commented by kaz-shin at 2007-01-11 01:18
しげぞうさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
BOOK OFFで見かける角松さんのアルバムで1番多いのが『ALL IS VANITY』で
2番目が『TEARS BALLAD』という感じですね。
淋しい気もしますが、私の記事を読んで興味を持ってくれた人が聴いて
みようかなと思える値段ですよね、250円て・・・(笑)
そういう風に考えるようにしてます。事実私も色んな良いアルバムを250円で買ってきましたから。

次利さんのベースがたまらなく好きなんですよ。存在感が半端じゃないです。
久しぶりに次利さんらしいベースが聴けて、嬉しかったですね。
Commented by rs at 2007-01-11 08:57 x
確かにこのアルバムから陰になって行きましたね、
只、凍結前の作品という事で自分の評価は高いです、
トータルで満点に近い出来かと。
但し、滅多に聞く気が起きない作品でもあります。

この中で好きな曲は海ですかね、曲の雰囲気が好きです。
Commented by 弥生 at 2007-01-11 19:32 x
こんばんわ。詩で音楽を聴く私としてはこのアルバムの曲達も心打たれる歌詞ばかりでした…………私としては“一人の人を愛しぬく”という手の歌が好きなものですから………


初めてこのアルバムを聴いたとき車の中だったので、タバコの燃える音が聞こえませんでした。

“だし?”“あし?”どちらなんでしょうか(?_?) 

ティラーズからあるがままにが私にとっての彼の原点です。

勿論それ以前の作品もノリが良くて好きです。
“オール〜”は一人でじっくり聴いていたいものです。


にしても、この作品への意気込みが長文から伺えます。

そういえばプレイヤーは一度しか聴いていないなぁ…………(;^_^A
Commented by milkybar at 2007-01-11 22:54 x
ごぶさたしてます。
この作品はほんとにカッコイイと思います。「ALL IS VANITY」のバジー・フェイトンのソロが好きです。私の持ってるのはオリジナル盤でした。リマスター盤を是非聴いてみたいです。
Commented by kaz-shin at 2007-01-11 23:29
rsさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
独特な雰囲気のアルバムで、BGM的に聴けるようなアルバムではありませんね。
結構真剣に聴いてしまうアルバムなので疲れます(笑)
rsさんの仰る、滅多に聴く気がおきないアルバムというのも頷けます。
それでいて、たまに無性に聴きたくなるやっかいなアルバムです。
Commented by kaz-shin at 2007-01-11 23:38
弥生さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
詩で音楽を聴くというのが1番理想なんだろうと思いますよ。
私の場合、メロディー、アレンジ(演奏)、詩という順番になってしまいます。
だから、私の書くレビューってサウンドに関わる事ばっかりなのです(笑)
それゆえ内容も薄い訳で・・・(恥)

>“だし?”“あし?”どちらなんでしょうか(?_?) 
これは「UP TOWN GIRL」の事でしょうか?
歌詞の中に「私抱きたきゃ そう 今すぐに お足お出し」というのがありますが・・・そのことですかね。
ここで言う「お足お出し」って、「金を出せよ」の意味ですね。
この歌の歌詞結構好きなんですよ。
特に「顔と脚が綺麗なら、渡る世間に鬼はないのよ」ってところが・・・(笑)
Commented by kaz-shin at 2007-01-11 23:40
milkybarさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ご無沙汰してました。でも、ブログ拝見してますよ。

ぜひリマスター盤も聴いてみて下さい。冒頭のSEから音が違いますから・・・。
中古なら簡単に見つかると思いますので。
Commented by いわとも at 2007-01-12 00:16 x
最近は、これ程作り手の「想念」みたいなものが入っている作品の数が少ないような気がします(気がするだけか??)。
 
私も両方のCDを持っています。
探せば、初回盤に付いていたカード(ハガキ?)が見つかるかも知れません(笑)。
Commented by kaz-shin at 2007-01-12 01:50
いわともさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
あのカードの使いみちが未だに分かりません(笑)
いわともさんの仰るように作り手の想いが詰まってますよね。
それが好みかどうかは別の問題としてですが・・・。

私がこのアルバムを評価している1番のポイントは、それまではいかに格好良い
演奏をするか(させるか)だったのが、このアルバムでは素晴らしいミュージシャンに
いかに良い演奏をしてもらうかを十分に意識していように思えるところなんですよ。
金さえ払えば良いミュージシャンを集め、演奏させる事は出来るでしょうけど、
そのミュージシャンのワン・アンド・オンリーのプレイを自分に書いた曲に
どのように彩らせるかを考えてアレンジしたような気がしてならないのです。
その辺りの拘りを私は強く感じるんですよね。
Commented by ohiro at 2007-11-24 22:08 x
噂には聞いていましたが、スゴイアルバムですね!この辺の名盤が250円~500円で買えちゃうのがまたまた・・・。角松さんの作品、これから聴いていこうと思います。「活動凍結」などイロイロドラマもあるようですが、とりあえずは先入観なしで・・・
Commented by kaz-shin at 2007-11-25 00:26
ohiroさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ohiroさんのコメントにありましたが、ohiroさんには、ぜひ先入観無しに
角松さんの音楽を聴いて欲しいと思います。
私のようにデビューから聴き続けていると、否が応でもイメージとか先入観が
顔を出してしまいます。角松さんは素晴らしいアーティストなんで、純粋に
彼の音楽を楽しんで下さい。そしてまたレビュー記事を書いて下さいね。
楽しみにしています。
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