角松 敏生が自身の活動を凍結中に、プロデューサーとして活動を精力的に行っていた時代のプロデュース作品の一つ、中谷 隆博のデビュー・アルバム『LIFE SIZE』(1996年)を紹介しましょう。
九州は熊本の出身らしいですが、どういう経緯で角松のプロデュースでデビューしたのかは不明ですが、角松のレーベルであるiDEAKからリリースされています。現在はTAKAHIRO名義で活動を続けているようですが、アルバムは『LIFE SIZE』以降はリリースされていないようです。
中谷の音楽のルーツはR&B、ソウル系の音楽にあるようで、アルバム収録曲10曲中7曲が中谷の作詞・作曲によるものですが、ソウルっぽい匂いにする曲が多いように思います。残り3曲を角松が書き下ろした作品になっており、アレンジは角松が7曲、山田 洋が1曲、山田・角松コンビで2曲です。ドラムレスの打ち込みサウンドが主体ですが、中谷のハスキーな声と割りと素直な歌い方に合わせたのか、比較的角松の打ち込みにしては大人しめなのが好感が持てます。
『中谷 隆博 / LIFE SIZE』
01. gala ~ 涙色のエンジェル
02. Marionette
03. Jungle²
04. 君を忘れない
05. シェリー
06. LAST MESSAGE ~ 星の王子様が帰る日
07. MASOCHISTIC LOVE
08. カサゴ
09. Tears
10. Sailor peaple
作詞・作曲:中谷 隆博、編曲:角松 敏生によるデビュー・シングル01。アフリカン・ビートにのせたソウルフルなナンバー。勝田 一樹のサックス・ソロがフィーチャーされている他は全篇打ち込みです。
作詞・作曲・編曲:角松 敏生による02。中村 キタロー(b)、浅野 祥之(g)、勝田 一樹(sax)が参加したドライヴ感溢れるナンバーです。角松、伊藤 恵子によるコーラス・ワークがなかなか良いですね。
作詞・作曲:中谷、編曲:山田 洋、角松によるヒップ・ホップ系のアレンジが印象的な03。キャッチーなメロディーと中谷の歌声が魅力のナンバーです。間奏でのスリリングなシンセ・ソロは難波 弘之です。角松がコーラスではりきってます(笑)
作詞・作曲:中谷、編曲:山田、角松によるミディアム・メロウなナンバー04。小林 正弘を中心としたホーン・セクションと春名 正治(sax)と浅野 祥之(g)が参加しています。目立ちませんが、浅野 祥之のギター・カッティングがかなり格好良いですね。
軽快でノリの良さが特徴の05。作詞・作曲:中谷、編曲:角松によるナンバーですが、アルバム中でアレンジが1番好きな曲です。この位軽めの打ち込みサウンドだと、結構心地良いですね。間奏のトランペット・ソロは名手・数原 晋です。大好きな曲です。
作詞・作曲・編曲:角松による3rdシングル曲06。控えめなアレンジの美しいバラード曲です。吉川 忠英のアコースティック・ギターと中西 俊博のヴァイオリンが美しく響きます。
作詞・作曲・編曲:角松によるミディアム・バラード07。中谷の個性にピッタリなナンバーを書いていると思います。やはり角松にしては控えめな打ち込み、コーラス・ワークが功を奏しているのではないでしょうか。サックス・ソロは勝田 一樹です。
作詞・作曲:中谷、編曲:山田 洋によるコミカルなナンバー08。レゲエ調のアレンジとユーモラスな曲とがマッチしていて楽しい曲に仕上がっています。故郷の有明海でもカサゴ釣りを題材にした曲で、途中監視員の役で故・浅野 祥之の生声が入っています。結構好きな歌です(笑)
作詞・作曲:中谷、編曲:角松による2ndシングル曲09。アルバム中で最もポップなナンバーですね。ラテン色の強いサウンドが特徴で、勝田 一樹のサックス・ソロと伊藤 恵子のコーラス・ワークに注目して欲しい1曲。
作詞・作曲:中谷、編曲:角松によるゴスペル調のスケールの大きなナンバー10。数原 晋のホーン・アレンジと角松のリズム・アレンジが絶妙なバランスで、キャッチーなメロディーを壮大なゴスペル・ソング風に仕上げています。村田 陽一のトロンボーン・ソロ、勝田 一樹のサックス・ソロとゴスペル調のコーラス・ワークが素晴らしい1曲です。
1996年頃の角松は積極的にプロデュースの仕事をしており、良い作品を結構作っていましたが、セールス的にはいまひとつといった感じだったように思います。いつの時代でもそうですが、良い作品が売れるとは限らないのが音楽業界の難しいところですよね。角松の一連のプロデュース作品も良い作品なんですが、厳しい見方をするとインパクトに欠けてるような気がします。ヒット・チャートを支えているのは、いつの時代でも10代~20代の若者達なんですよね。その若者達が飛びつくような要素が見当たらないようにも感じます。
レコード会社も良い作品が売れることが1番望ましいのでしょうが、売れる作品を優先するのも当然な話です。今の時代、プロデューサーには厳しい時代かも知れませんね。
決して派手さはないですが、良い曲が多く歌声も良いですから気持ち良く聴けるアルバムとしてもお薦めです。現在では入手困難だと思いますが、中古店でたまに格安で見かけます。興味のある方は根気良く探してみて下さい。
1曲目は、私が聴く限り、JADOESの「All My Dreams」を再構築した曲という感じがしますね。なんか、ハウスっぽいというか。
5曲目もハウスっぽいですが、ドラムンベースにしても、ハウスにしても角松さんが手がけると、角松サウンドとして違和感なく聴けますね。
多分、マニピュレーターの山田さんの功績もあるんでしょうね。
プロデューサーとしての角松さんにしても、どうしても芸術至上主義的な傾向があると思うんです。ご友人の音楽ライターである金澤さんも然りです。こういうスタンスを取り続けることには、私は不満ですね。
商業至上主義の裏返しに過ぎないと思うのです。
とはいえ、角松さんはMAESTRO-Tさんのようなプロデューサーの先駆けになったのは、事実だと思います。角松さんに期待するのは、若い世代の作曲家やアレンジャー、あるいはスタジオミュージシャンを育てることなんです。これからは、そういうことを積極的にやっていただきたいと思いますね。若い世代の人たちとコラボして欲しいですけど、無理かな、、、、。
>プロデューサーとしての角松さんにしても、どうしても芸術至上主義的な傾向があると思うんです。
その通りだと思います。だからこそ活動を解凍したんでしょうし、プロデューサー業も
一歩退いた感じになっているんでしょうね。
活動を再開してからの角松さんの活動や作品(映像も含み)に接して思うのは、
商業的に成功することよりも自分の音楽を追及すること(これが悪いとは思ってませんが・・・)と
自分を支えてくれるファンの囲い込みに力を注いでいるようにしか思えないんですね。
80年代の作品を敬遠するような態度が垣間見れるのですが、70~80年代の
アーティスト気質が抜けきれていないのが角松 敏生本人ではないのかと
思ってしまいます。
(ちょっと長くなりそうなので、もう一つ投稿させてください)
僕の今、感じた、感じている事です。
貴重なスペースを拝借しました。失礼しました。
角松さんに関して、こんなにも熱いコメントを頂戴すると嬉しくなります(笑)
>自分達が満足出来る良いモノを作りさえすれば、わかってくれる人はわかってくれる・・・。
私もそれで良いと思っている一人です。ただし、リスクを覚悟しているという言動が見えれば・・・ですけどね。
活動解凍後の角松さんのライブでのMCは、私にとって本当に不愉快で腹の立つものばかりでした。
内容に関しては、kadomaniaさんがコメントしてくれた内容を当然含んでいます。
25周年記念ライブでも言ってることに一貫性を感じないものばかりで・・・少し厭きれました。
だからもうライブへは暫く足を運ばないことにしました。
ただ、角松さんが満足出来る良いモノは、これからも聴いていきたいなと思ってます。
良い作品=売れる作品という方程式の難しさを、角松さんはよく知っているはずなんですけどね。
達郎さんはユーザー(リスナー)の求めているものをちゃんと把握した上で、自分のやりたいものとの
バランスを上手く取れるアーティストですよね。
「囲い込み」について少し補足させてもらいます。
私も角松さんは、囲い込みなど出来ない不器用なアーティストだと思ってました、つい最近までは・・・。
ところが今回発売されるDVDが8枚組だというの知り、今支持してくれるファンの囲い込みを考えてるのか?
と思うようになったんですよ。
8枚組で28,000円という値段(会員ではないので)は、そう簡単に出せません。
ファンの事を考えるのであれば、見たいツアー、ライブのDVDだけ購入出来る方法も取れたはずです。
たしかに、パッケージや何やらでコストはかかるでしょう。それでも単品購入、BOX購入が出来るようにした方が
親切ですよね。嫌な言い方になりますが、(お金を)取れる奴から取りましょうみたいに感じて
しまうんですね。それが「囲い込み」という言葉を使った真意です。
ヒストリーだから8枚組なんでしょうけど・・・、どうなんでしょうねぇ(笑)
もう一つだけ、あえて不満を言えば、DVDの値段に関しては、頑張って頂いたと勝手に解釈しておりますが、25周年記念というタイトルはふさわしくないなあと・・・昨年のライブもそうですが、25周年と言う意味が違ってしまっているのが、かなり残念です。どちらも解凍後が中心ですから。これはいただけない。しっかりとデビューからの音を総決算してもらって、前へ進んで頂きたかったところですね。
>何度もすみません。
いえいえ、大歓迎ですよ!
>しっかりとデビューからの音を総決算してもらって、前へ進んで頂きたかったところですね。
確かにそうですね。特にイケイケ時代(笑)の曲に胸躍らせて聴いていた人間としては、
昔の曲を否定的に扱われると悲しくなります。
あの頃は、今みたいに情報が溢れていなくて、新しいアルバムが出るまで
手持ちのアルバムを繰り返し聴いて楽しんでいたし、次はどんな曲を聴かせて
くれるのかが楽しみでした。
これからは、またそういう付き合い方が出来たらなと思いますね。
昔はアーティスト本人の意見や思いなんか知らなくたって、音楽を聴いて
感じ取っていたんですから・・・。
変に本人のMCやコメントに一喜一憂する必要もないでしょうしね。
前にも書きましたが、角松さんという人間に興味があった訳ではなく、彼の作った作品が好きなだけですから・・・。
これからも作品を楽しんでいきたいなと思います。
東京丸の内KENWOODスクエア
無料ライブです。詳しくは・・・
http://www.kenwood.co.jp/j/square/event/twilight.html