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松本 伊代_風のように ◇ 2007年 11月 06日
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今回紹介するのは、松本 伊代が1987年にリリースした林 哲司のプロデュース・アルバム『風のように』です。特に松本 伊代のファンということではありませんでしたが、林 哲司のプロデュースとなれば話は別です。初めて聴いた時は、想像以上に歌手として成長していることに驚きましたね。

松本 伊代は1981年、ご存知"伊代はまだ16だから~"の「センチメンタル・ジャーニー」でデビューしました。このアルバム・リリース時には22歳となり、アイドルからの脱皮を図ろうとしていたのではないでしょうか。そこに白羽の矢が立ったのが林 哲司ということなのかも知れません。
アルバムとしてのトータル的なイメージを出そうとしたのか、作詞は全曲・川村 真澄、作曲はもちろん林 哲司(1曲のみ岸 正之)、編曲は全曲・船山 基紀です。この3人による作品で、このアルバムにも収録されている「信じかたを教えて」、「サヨナラは私のために」、「思い出をきれいにしないで」の3曲は"変身三部作"あるいは"サヨナラ三部作"と呼ばれていたようですね。

それまで松本 伊代のあの独特な声質のせいか、歌手として魅力を感じていなかったのが事実です。ところがある日、ラジオだったかTVだったかは忘れましたが「サヨナラは私のために」を聴いて「結構良いな」と思うようになり、林 哲司がプロデュースということを知って俄然興味を持ったというのが事実です。あの声質を上手く活かした曲やヴォーカル・ディレクションは流石ですね。しっとりと聴かせる曲が多く、今の時期にも似合うアルバムだと思います。

『松本 伊代 / 風のように』
01. 信じかたを教えて
02. 星をまねて
03. サヨナラは私のために
04. Too Late Too Young
05. 思い出をきれいにしないで
06. それから
07. 風の宮
08. 硝子のカラス
09. カレードスコープ
10. すてきなジェラシー

イントロから洒落たポップスを連想させる船山 基紀のアレンジのセンスが光る01。"変身三部作"の第一弾シングル曲です。サビのメロディーがこの手の曲を得意とする林 哲司らしいメロディーですね。純粋に良い曲だと思います。

男性の立場で歌われるミディアム・ナンバー02。歌に表情が出てきたようで、アイドル時代の曲しか知らなかった私には少々驚きだった曲です。広谷 順子、比山 貴咏史、木戸 やすひろによるコーラスが美しい1曲。

"変身三部作"の第二弾シングル曲03。個人的に名曲だと思っている1曲です。1度聴いたら忘れられないサビのメロディーは秀逸ですね。松本 伊代の声とよくマッチしていますし、歌手としての魅力が溢れている曲ではないでしょうか。

ポップな曲調で、一時期の菊池 桃子やオメガトライブの音楽を彷彿させる04。船山 基紀のアレンジはある意味オーソドックスなんですが、逆に絶対にハズレの無いアレンジを施していると言えますし、まさにその辺りが職人の仕事という気がします。

"変身三部作"の第三弾シングル曲05。三部作の中では1番爽やかなサウンドの曲ですね。やはりサビのメロディーはさすが林 哲司と思わせます。三部作全てが、もはやアイドルとしての面影は無く、大人が聴くに堪えるシンガーの歌という印象を受けます。

一転してCITY POP色全開のナンバー06。こういう明るいポップ調の曲においても、しっかりとした歌を聴かせてくれます。なんとも80年代前半のCITY POPを聴いているような爽快感がたまらないナンバーです。若かりし頃の角松 敏生を彷彿させる曲ですね(笑)

アレンジの面白い07。打ち込みとコーラス・ワークを巧みに使って独特の爽やかさを演出しています。松本 伊代自身のハーモニーや広谷 順子との掛け合い等、それぞれの声を活かした曲です。

林 哲司流AORナンバーといった感じの08。同じような曲構成なんですが、それでいて違うメロディーをこれだけ書けるというのもある意味凄いことですね。これも他に曲同様、サビのメロディーが印象的なナンバー。

しっとりと聴かせるデュエット・ナンバー09。デュエット相手は、元C-C-Bのベーシスト・渡辺 英樹です。おそらく声質の相性を考えての人選だと思います。結構良い歌を聴かせてくれます。

このアルバムからの4曲目のシングル曲となった10。唯一、岸 正之の作曲によるナンバーです。どことなくフィリー・サウンドを意識したようなアレンジと、ポップで耳に馴染むメロディーの1曲です。林 哲司の曲と言われても不思議ではないくらいで、おそらく岸 正之もその辺を意識して書いたのかも知れませんね。

林 哲司の作品について書かれた「林 哲司全仕事」(音楽之友社)によると、林 哲司自身もこのアルバムの仕上がりにはかなり満足していたと書かれてありました。確かに楽曲はどれも粒揃いで、私が聴く限りでも捨て曲無しのメロディアスなナンバーが集まっていると思います。
曲も良いのですが、松本 伊代のヴォーカルの魅力が溢れています。80年代後半に入ってくると、もはやアイドルは一部を除けば下降線を辿っていた頃ですね。そんな中、多くのアイドル歌手がアイドルからの脱皮を図り頑張っていたのも事実ですが、やはり下降線を辿っている時の起死回生というのは難しかったのでしょうね。決して商業的に成功とは言えなかったかも知れませんが、このアルバムは良いアルバムです。
BOOK OFF等の中古店ではたまに見かけるアルバムです(決して安くはないですが・・・)。もし興味があったら探して聴いてみて下さい。お薦めですよ。
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by kaz-shin | 2007-11-06 00:01 | J-POP | Trackback | Comments(15) | |
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Commented by kotaro at 2007-11-06 14:56 x
アイドル歌手の後期の作品というのは、TVやヴィジュアルの露出が殆どなく、こんなレコード(CD)が出ていたの?と驚く作品に時に巡り会う楽しみがあります。
松本伊代もセンセーショナルなデビューからこの頃で5年半、よく息長く歌い続けていたことに驚くと共に、このアルバムを取り上げるKaz-shinさんの目の付けどころに感心します。

既にミーハー要素は殆ど枯れ切っているので率直に音楽鑑賞の対象になっているのですが、僕は収められたシングル4曲の内、1以外の3枚を所有。とりわけ3が好きです。

デヴュー当時のケーシーランキン&鷺巣詩郎、2〜3年目の吉田拓郎や康珍化、その後の遠藤京子や細野晴臣、そして林哲司と、このラインナップを見ているだけで、CBSソニー帝国に対する名門Victorの意地と意気が感じられませんか。
僕はそんな重圧をものともせず、カヨワにカレンに80年代初頭を踊ってみせた、
そんなIYOちゃんが好きです。
Commented by アンクル・タロ at 2007-11-06 21:13 x
とうとう伊代ちゃんの登場ですね(笑)。
このアルバム以降の3作品も全て良い曲を歌っています
当時の同年代の女性なら共感出来るのではと思えるくらいの作品です。お世辞にも歌は上手くないのですが....息の抜き方がちょっと
切なく響き心地よかったりします(不思議な声ですね)。
私も林哲司が手掛けていると言う事でアルバム(LP)を購入しましたが
あまりの出来の良さにビックリでした 。皆良い曲ばかりでKaz-shinさん
が言うようにホント捨て曲がありませんね♪
最後に出したアルバム『Mariage』も良い曲ばかり。 特に崎谷健次郎さんが提供した『手遅れの告白』などは『もう一度夜を止めて』のような
スローバラードです。中古で見かけたら買ってみて下さい。
損はしないと思います(笑)。


Commented by hisa at 2007-11-06 23:17 x
松本伊代が出るとは意外!これは10枚目でアナログで出た最後のアルバムですね。このあとCDで3枚。
初期は筒美京平がメインでしたが、2枚目のA面は亀井登志夫、4枚目「EndlessSummer」にはなんと田口・堀口コンビの「風のFMステーション」があります。5枚目「夢ひとつ蜃気楼」には堀川まゆみ作曲の「恋心・3オクターブ」、田口・杉コンビのの曲が2曲、南佳孝の曲も2曲あります。
6枚目「SugarRain」は全曲尾崎亜美、カバーが多いですが名曲「時に愛は」がはいってます。7枚目「Belive」のB面は全曲尾崎亜美。尾崎・松本のベストマッチ「恋のKNOW-HOW」などいい曲いっぱいです。
売れていたので意外かもしれないですが、ニューミュージック系の曲はすごく多いです。CDになってからは小西康陽なども曲を提供してます。
ほかのアルバムも聞いてみてください。確かに安く出てませんが・・。
Commented by kaz-shin at 2007-11-07 00:27
kotaroさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
正直なところ、林 哲司さんがプロデュースをしていなかったら伊代ちゃんの
アルバムを聴く事は無かったと思います(笑)
大した期待もしてなかったのですが、これが嬉しい誤算だった訳です。
80年代という時代は、アイドルであろうと制作サイドは良い曲、音楽を作ろうと
頑張っていた時代だったんだなとつくづく思いました。
確かにビクターは名門でしたから、意地というかプライドもあったんでしょうね。
こういう所で競っていたというのも音楽的にはプラスになっていたでしょう。
たががアイドルだと侮れないことを実感したアルバムでした。
Commented by kaz-shin at 2007-11-07 00:52
アンクル・タロさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
伊代ちゃんに関して詳しいんですね~。頼もしいです(笑)
kotaroさんのコメントの返事にも書きましたが、伊代ちゃんのアルバムは
この1枚しか聴いたことがありません。
でも、このアルバムの路線であれば以降のアルバムも聴いてみたいですね。
BOOK OFFでたまに伊代ちゃんのアルバムを見かけますが、
1,500円以上の値段が付いていることが多いですね。
でも、今度見つけたら買ってみようと思います。お薦めありがとうございます。
Commented by kaz-shin at 2007-11-07 00:56
hisaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
hisaさんもアイドル関連は相当お詳しいですね。色々教えて下さい。
このアルバムは、林 哲司さんの楽曲の良さはもちろんなんですが、やはり
伊代ちゃんのヴォーカルの良さに本当に驚きました。確かに上手いとは言えないのですが、
表現も豊かで声が独特なだけに凄く味がありますね。
失礼ながらこんなに歌えるとは思っていませんでした(笑)

売れることも大切ですが、良質なものを作ろうとしていた制作サイドの熱意が伝わってきますね。

アンクル・タロさんとhisaさんのコメントを読んで、他のアルバムも俄然聴きたくなってきました。
BOOK OFFで探してみますね。
Commented by 哲学者になりたい猫 at 2007-11-18 04:53 x
いや~林PD作品とはいえこのアルバムまでレビューなさるとは驚きです。「確かに上手いとは言えないのですが、表現も豊かで声が独特なだけに凄く味がありますね」と書かれていますがまさに伊代ちゃんの魅力って実はここなんですよね。筒美京平御大が自分が好きな三大ボイスって言わしめただけあると思うんです。また伊代ちゃんは初期から後期まで名盤揃いの人で特に後期三部作が好きな人はこのアルバムの前作「天使のバカ」から好みじゃないかなと思います。ただどうしても伊代ちゃんはデビュー曲のみが語り継がれ歌手としての側面に光が当たらないのが残念です。またアイドル作品では全曲康ー林作品で作られている岩崎良美さんの「Wardrobe」は名盤の誉れ高いですのですがCDが現在非常に手に入りにくいにのが残念です。
Commented by 哲学者になりたい猫 at 2007-11-18 05:11 x
すいません、少し補足させてください(笑)林哲司さんはひとりの自立した女性へのイメージに変えることがこのアルバムのコンセプトだったそうです。そして最初フレンチポップスのようなアンニュイな歌い方をイメージしてたんだとか。でもたまたま遅れてレコーディング入りして伊代ちゃんの歌声を聞いて心地よい裏切りをさせられ、この声を生かすようにしたそうです。林さんも認めていますが自分のイメージを追及してたら個性を殺したオーバープロデュースになっていただろうと言ってまして、本当に幸運な偶然と共に「歌の付いたブロマイド」と悪口を言われ蔑まされていたアイドル作品というジャンルでさえもスタッフが良質なものを作ろうとしていた80年代の音楽シーンが作り出した作品なのかもしれません。
Commented by kaz-shin at 2007-11-19 22:25
哲学者になりたい猫さん、コメントありがとうございます。
原田知世さんのレビュー記事でも書きましたが、勝手な自分のイメージで
聴かずに過ごしてきたのを後悔したアーティストの一人が松本伊代さんでした。
もし、林哲司さんがプロデュースしていなければ、今も聴いていなかったかも知れません。
もちろん、林さんの楽曲が好きだというのもありますが、それ以上に伊代ちゃんが
歌を大切に、丁寧に歌っているのを聴いて凄く好感が持てました。
歌の上手い、下手に関わらず、歌が好きで、スタッフ共々新しい松本伊代を見せようと
頑張って作ったアルバムだというのが見事に伝わってきたアルバムでした。
アイドル系の林さんプロデュース作品では、哲学者になりたい猫さんと全く同じで
このアルバムと岩崎良美さんの『Wardrobe』は私の中では双璧をなすアルバムです。
なかなか探すのが大変ですが、他の松本伊代さんのアルバム、特にこの頃の
アルバムを聴いてみたいと思っています。
Commented by ギムリン at 2009-10-24 18:26 x
ご無沙汰しています。伊代ちゃんの『風のように』は、'87年でアナログ盤よりCDの方が多くなりかけていたころでしょうか。中古屋さんでもチラチラ見かけていたんですが、ジャケットが暗い感じでパスしてたんですよね。でも、今回、紙ジャケ復刻で買ってみると、なかなか頑張って歌っていますね。林哲司さんとしては、編曲もやっていた菊池桃子さんの方に時間は割いていたと思いますが、同じような切ない世界をもう少し大人の女に歌わせてみました、という設定でしょうか。
CCBとの関係などは、紙ジャケのライナーを読むと、なるほど・・・と思ったりしますよ。試聴はたとえば下記などで。
www.hmv.co.jp/product/detail/3642500

良美さんの『Wardrobe』共々、めでたく復刻なったことで、再評価が進むと良いですね。
Commented by kaz-shin at 2009-10-26 01:24
ギムリンさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ご無沙汰しておりました。

私が伊代さんの歌を聴いて感じたのは、単に歌わされているのと違って1曲1曲ちゃんと自分なりに曲を消化させて歌っているということです。
だから技巧的に上手くなくても聴いていて響いてくるのだと思います。
今回の再発で多くの人に聴いてもらいたいなと思います。きっと伊代さんのイメージが変わるでしょうから・・・。
Commented by Gaku Shiroma at 2010-01-07 09:08 x
Kaz-shinさん。
サンフランシスコからのコメントです。
2,3ヶ月前にYouTubeで松本伊代の新曲(私の声を聞いて)を偶然見つけて、”ああ、そうだ、日本にいた時、彼女のCDを三枚持っていたなあ”と思い出しました。そのCDは(天使のバカ)(風のように)そして(Private File) でした。
当時、彼女は、お笑い番組(志村けんのだいじょうぶだあだったかな?)の番組でコントをしていて水ぶっかけられたり、パイを顔にぶつけられたりしていたと思うんですが、その時歌っていた彼女の(信じかたを教えて)を聞いてビックリしたのを憶えています。あんなバカみたいな事をやってるのに歌う時の伊代ちゃんはすごいマジで歌ってるんですから。それでアルバム(天使のバカ)を買って聞いてみたらまたまたびっくり。(松本伊代ってすごく良いかも!)って当時、高校生だった僕は正直そう思いました。




Commented by Gaku Shiroma at 2010-01-07 09:09 x
残念ながらアメリカに移住した時、彼女のCDは手放したものの、最近新しく紙ジャケのCDの復刻版が出ると聞いたので再度CDを購入しました。久しぶりに聞いて思った事は、今現在聴いても古くないと思いました。新曲(私の声を聞いて)を聴いて思った事ですが、彼女は歌うのがすごく上手くなっています。あの当時のアイドルが今どんな歌を歌ってるのか知りませんが、松本伊代に関してはまた歌うべきだと思います。(私の声を聞いて)を含む新しいアルバムがでたら買うけどなー。
Commented by kaz-shin at 2010-01-09 00:19
Gaku Shiromaさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
伊代さんはつい最近まで、デビュー当時のイメージが強過ぎて敬遠していたんですが、このアルバムを聴いて本当に驚きました。
自分の曲を大切にして、丁寧に歌っていることがアルバムを聴いていてひしひしと伝わってきましたから・・・。
アイドル系の歌手の歌で初めて感じた驚きでしたね。
それ以来、少しずつですが伊代さんのアルバムを集めています。
大人になり、妻・母となった今、また違った歌が歌えるようになったと思うので、私も新しいアルバムをぜひとも聴いてみたいです。
Commented by taku at 2015-02-15 23:39 x
はじめまして このアルバムのレビューが載っていたことが嬉しくてコメントしたくなりました。
私もこのアルバムを聴くまでは、松本伊代のデビュー当時の曲が自分には合わなくて敬遠していました。なんであんな曲を歌うのかが疑問でした。
ただ彼女自身も「デビュー当時の曲は嫌い」というインタビュー記事を見ていやな曲を歌わざるを得ない姿に共感していましたが、ふっと歩いていたレコード屋で聴いた「サヨナラは私のために」ですごく衝撃を受けたことをよく覚えています。
何しろ、このアルバムだけは曲のクオリティーがずば抜けていて、さらに当時のスタッフが鼻にかかる歌い方を徹底的に矯正しただけあって、初めはだれが歌っているのか判らなかったぐらいです。
このアルバムで林 哲司さんのプロデュースのすごさを知りただただ驚愕したのを覚えています。みんなシングルカットしても充分な評価を得られるアルバムなんてそうそうないと思っています
新作がでていないのが残念ですが、ぜひとも松本伊代×林哲司という黄金コンビで制作してほしいと思っています
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