今回紹介するのは、稲垣 潤一が1983年にリリースした通算3作目にして名盤と誉れの高い『J.I.』です。確かに私も名盤だと思っている1枚で、本当に曲も粒揃いで稲垣 潤一のヴォーカルも冴えています。
正直なところ、稲垣 潤一に関してはデビュー当時から歌が上手いと思ったことはありませんでした。しかし、去年林 哲司のライブに彼がゲスト出演した時、初めて生歌を聴きましたが声量もありましたし、流石にプロの歌だなと感じました。加えて独特な声質のハイトーン・ヴォイスは、歌の上手い下手ということよりも魅力的であるということは間違い無いですね。
CITY POP系のアーティストの中において、稲垣 潤一はある種特異な存在と言えるかも知れません。と言うのは、CITY POP系のアーティストのほとんどが自作の曲を歌う、いわゆるシンガー・ソングライターなのに対し、大半の曲がプロの作家、他アーティストの提供曲で占められており、シンガーとしてこれだけ人気を集めたというのは珍しいかも知れませんね。
このアルバムを聴いていると、変に自作曲に拘らずに魅力的な歌声を前面に出すことで個性を打ち出していると思います。このような形で稲垣 潤一を売り出したスタッフ陣のセンスの良さを感じさせます。
『稲垣 潤一 / J.I.』
01. MARIA
02. 夏の行方
03. 夏のクラクション
04. 男と女
05. Everyday's Valentine - 想い焦がれて -
06. 蒼い雨
07. 言い出せなくて
08. 一人のままで - There's No Shoulder -
09. エスケイプ
10. 生まれる前にあなたと・・・
作詞:売野 雅勇、作曲:林 哲司による都会的なポップ・ナンバー01。サビのメロディーのキャッチーさがいかにも林 哲司らしいです。CITY POPの全盛を支えたと言っても過言では無い井上 鑑のアレンジも素晴らしいです。
作詞:秋元 康、作曲:松尾 一彦によるいかにも夏っぽくてどこか懐かしい感じの3連バラード・ナンバー02。井上 鑑にしてはオーソドックスな感じのアレンジなんですが、オーケストラの使い方などはやはり上手いですね。稲垣 潤一の声によくマッチした曲だと思います。
作詞:売野 雅勇、作曲:筒美 京平による5枚目のシングル曲で、私自身名曲だと疑わないナンバー03。本当に筒美 京平という人は凄いです。加えて井上 鑑のアレンジも絶妙で、まさに夏の終わりの切なさ、別れの淋しさがサウンドで表現されていると思います。
作詞:秋元 康、作曲:筒美 京平によるミディアム・ナンバー04。これも良い曲です。筒美 京平の天才たる所以は、歌い手の歌声や歌い方の魅力を最大限引き出すようなメロディーを書いてしまうところなんだと思います。この曲のサビのメロディーは、稲垣 潤一の歌声にドンピシャといった感じです。
作詞:湯川 れい子、作曲:安部 恭弘によるボッサ風ナンバー05。安部 恭弘らしい洒落たメロディーと都会的な井上 鑑のアレンジの組み合わせは、まさにCITY POPと呼ぶに相応しい1曲ではないでしょうか。切なげな稲垣 潤一のヴォーカルも光っていて、ヴォーカリストとして素晴らしい素質を持っていることを証明しているような気さえします。
作詞:秋元 康、作曲:松尾 一彦、編曲:松尾 一彦、清水 仁、大間 仁世による06。この曲のみ井上 鑑のアレンジではなく、小田 和正以外のオフコースのメンバーがアレンジと演奏を担当しています。淡々としたという印象の曲ですが、これが稲垣 潤一の歌声とマッチしていて聴く度に魅力的に思えてくる、そんな1曲ですね。明らかに井上 鑑のサウンドと違うのも良いアクセントになっているような気がします。
作詞:秋元 康、作曲:林 哲司による美しいバラード・ナンバー07。バラードの職人・林 哲司らしさが詰まった曲で、私の大好きな1曲でもあります。秋元&林コンビというのも数々の名曲を生んでますね。スケールの大きいアレンジが曲を一層引き立てています。
作詞:湯川 れい子、作曲:松尾 一彦によるミディアム・バラード08。稲垣 潤一に提供している松尾 一彦の曲はどれも良い曲ばかりですね。稲垣 潤一の歌声の魅力を知り尽くしているからこそ書けるメロディーなのかも知れません。
4枚目のシングル曲09。作詞はなんと井上 鑑です。作曲は筒美 京平で、シングル曲を意識して書かれたメロディーだと分かります。その辺りが筒美 京平の凄いところなんですが・・・。この曲がリリースされた頃は大して好きではなかったのですが、何故か今は好きな曲になっています(笑)
作詞:さがら よしあき、作・編曲:井上 鑑によるバラード・ナンバー10。ストリングスの美しい調べが印象的です。
稲垣 潤一のシンガーとしての魅力に溢れたアルバムです。個人的には捨て曲無しだと思っていますし、稲垣 潤一のアルバムの中で最も聴いて欲しいアルバムですし、自信を持ってお薦め出来る1枚です。
曲のタイトルからは夏を連想させますが、決して夏限定という感じでもありません。
今の時期に聴いても気持ち良く聴けると思います。機会があったらぜひ聴いてみて下さい。
最後に参加ミュージシャンを紹介しておきます。井上 鑑(key)、山田 秀俊(key)、今 剛(g)、山木 秀夫(ds)、林 立夫(ds)、岡沢 茂(b)、高水 健司(b)、浜口 茂外也(per)、安部 恭弘(cho)、EVE(cho)
JIさんの魅力って、他人が書いた歌を自分の歌にしてしまう、これに尽きると思います。自分で曲を作らなかったからこそ、ここまでの安定感あるアーティストになれたのだと思います。いろんな作曲家や作詞家、アレンジャーとのコラボレーションを通して、可能性を広げていったのではないでしょうか。で、感じたのが、自作自演は余程の才能や音楽に対する哲学を持つ人間でない限り、かえって可能性を狭めてしまうことです。
他人が書いた歌を自分の歌にすることができる彼なら、カバーアルバムを出しても納得できますね。
稲垣潤一さんの魅力はアメリカのカントリー出身歌手のように
シティな曲を歌っててもどこか自然体でおおらかさが残ってる
そんなところかと思うのですが、いかがでしょう。
仙台出身、デビュー当時に乗ってた愛車が360ccのホンダZ、
82年の女性アイドル大豊作の年に戸惑いながらも27歳でデビュー。
どれも後から考えると良かったのではという感じです。
この人が変な潰れ方を一度もしなかったことも芸能界では奇跡のよう。
新沼謙二や吉幾三みたいにいじられたり開き直ったりもなく、仙台ですから、田舎でもなく東京でもない。
でも歌に対する真摯さは一途だし、シンガー1本の生き方に賛同する
コンポーザーたちがこぞってよい曲を提供する。
これがこの人の人徳でしょう。
悲しきダイヤモンドリング、PS抱きしめたい、
きらりと光る名曲の多さもJIの魅力でしょう。
レスが遅くなってゴメンナサイ!
本当にまつのすけさんのコメントの通りだと思いますね。
どんなタイプの曲であっても稲垣さんが歌うことで、完璧に稲垣カラーになってますもんね。
これってシンガーにとっては最強の武器でしょうね。
でも当時はシンガー・ソングライターがもて栄やされた時代でしたから、
過小評価されてたのかも知れません。
今更ながら魅力的なシンガーであると、このアルバムを久しぶりに聴いて再認識しました(笑)
本当に沢山の良い曲を持っているシンガーですね。
爆発的に売れるタイプの曲ではありませんが、心に残る曲を数多くリリースしていますよね。
これが稲垣さんの魅力であり、現在においても一線で活躍出来ている証なんでしょうね。
私はデビュー曲「雨のリグレット」には衝撃を受けた方で、当時流行ったリズム・パターン(ドゥービー風)にやられました(笑)
ただ当時は上手いとは思っていませんでしたが、最近聴き直すようになって彼の歌の魅力に嵌ってます。
声が好きだし、僕にはオリジナルより良かったりして。(笑)
年末に東京のブックオフで、子供に頼んで4枚ほど稲垣さんのCDを買って帰ってもらいました。こちらでは250円ではなかったので。
ご無沙汰してました。お元気でしたか?
稲垣さんの声って魅力的ですよね。
私の場合、昔は然程好きなタイプの声では無かったのですが、
今は何故か凄く魅力的に感じます。
若い頃と音楽的なジャンルの好みは変わっていませんが、
微妙に細かいところの好みは変わっているみたいです(笑)
>「日本人はすぐカテゴリ分けしたがるんだけど、それじゃ純粋に音楽楽しんでる事にならないよね」
確かにその通りだと思います。
でもこういうレビュー記事を書いていると、カテゴリ分けって結構便利なんですよね。
私の場合、文章力が無いので雰囲気を伝える為にはカテゴリや具体的なアーティストを例に挙げた方が説明しやすいですね。
特に私のブログを訪れてくれる方々は、皆さん音楽に造詣が深いので、余計カテゴリで説明しちゃった方が
伝わるのではないかなという気がします。
稲垣さんは、アーティストと呼ぶよりシンガーと呼んだ方がぴったりくる人かも知れませんね。
他にもオススメの彼のアルバムがあれば是非ご紹介下さいませ!
お久しぶりでした。ブログの更新を待ってましたよ!(笑)
稲垣さんは初期の数枚しか持っていません。
当時は然程好きなアーティストという訳では無かったので・・・(汗)
でも記事にも書いたように、最近は凄く良いなと思うようになって、少しずつでもアルバム集めてみようかと思っています。
良いアルバムに出会えたら、また紹介しますね。
さきほど,wikiのほうへもお返事してしまいましたが…(^^ゞ。
(J.I関連の場所に恋夜の時代劇ブログ紹介がヘンに浮いてます。)
稲垣さんの曲の紹介が詳細になされてありますね,スゴイ!
恋夜のブログでも稲垣さんの曲をもっと流していく予定です。
(雨の季節は特に似合いますよね!好きな曲がいっぱい!)
よろしかったら,またいらしてくださいませ(ヘンな時代劇もありますが)!
こちらからもまた,参上させて頂きます!
時代劇と稲垣潤一、なぜか案外共通するような気がいたします(笑)
久しぶりにエイプリルを聴き、秋元さんの詞と時代とボーカルがよく
合ってると感心しました。
雨を都会的に切り取ってみせたのは、82,3年頃の秋元氏の功績でしょうね。ウエットな感じでなくドライな感覚で。
(秋元氏の生き方は好きじゃないのですが、ゴメンナサイ)
それにしてもこの程度の記事にも関わらず、色んなところにトラバ記事になっているのですね。少々驚きました。
先ほどブログを少し拝見しましたが、時代劇のブログというのは本当に珍しいというか、凄いなと感心しました。
私自身、あまり時代劇に縁が無くて過去に見ていた時代劇と言えば、古いですが"木枯らし紋次郎"とか"必殺シリーズ"くらいなんです(笑)
こんな音楽ばかり(しかもマニアックな)のブログですが、これからもよろしくお願いします。
稲垣さんの歌声というのか声質は本当に独特で、何とも形容し難いのですが、
ある種のウェット感みたいなものが雨や海と言った水に関連した曲とマッチするのかななんて思ったりもします。
この方もレコーディングされた歌声と生の歌声が一緒ですね。