ここのところ洋楽を聴く機会がめっきり減っていたんですが、最近「glee」に嵌ったことでまた洋楽を聴くようになってしまいました(笑)
でも最近の洋楽事情には疎いので、もっぱら聴くのは70年代~80年代のAOR系ばかりですが・・・。
今回紹介するアルバムもコテコテのAOR系です。1950年代終盤に「Diana」や「You Are My Destiny」、「Put Your Head On My Shoulder」と数々のヒットを飛ばし一躍TOPスターに昇りつめ、一時の人気が翳り始めた70年代においては、自分で見つけてきたフランスのシャンソン曲に自身で歌詞を付け、尊敬するFrank Sinatraに捧げた曲「My Way」を大ヒットさせるなどシンガーとしてばかりではなく、ソングライターとしても非凡な才能を持ったアーティスト、Paul Ankaが1983年にリリースしたAOR作品『WALK A FINE LINE』です。
とにかく参加している面子が凄い!Paul Ankaと曲を共に書いているのがDavid Foster、Michael McDonald、Jay Graydon、Peter McCann、Steve Kipner等という豪華さですし、ミュージシャンも超豪華です。
紹介しておきますと
Drums : John Robinson、Mike Baird、Jeff Porcaro、Vinnie Calliutta
Bass : Nathan East、Lee Sklar
Guitar : Steve Lukather、Jay Graydon、Marty Walsh
Keyboards : David Foster、Michael McDonald、Michael Colombier、Bill Cuomo、
Percussion : Paulinho da Costa
Sax : Ernie Watts
Background Vocals : Michael McDonald、Peter Cetera、Kenny Loggins、Pages、Steve Kipner
これだけの作家、ミュージシャンが集まり、83年という時代に制作された訳ですから、これはもうAORの見本みたいな作品に仕上がっています。
私は1959年生まれですが、さすがにPaul Ankaの曲をリアル・タイムで聴いてはいません。どちらかと言えば60年代の日本のロカビリー・ブームの時に山下 敬二郎や平尾 昌晃が歌っていたカヴァーの方が馴染み深いと言えます。
ですから80年代にこのアルバムがリリースされた時、まっさらな状態でPaul Ankaを聴く事が出来ました。
私のイメージではPaul AnkaはAOR系アーティストであり、ソングライターなんです。
さて、アルバム『WALK A FINE LINE』ですが、AOR系の音楽が好きな方にはぜひ聴いて頂きたい作品です。おそらく最初の2曲を聴いただけで唸ってしまうことでしょう(笑)
特に素晴らしいのはコーラス陣で、それぞれの曲の雰囲気にピッタリな声質のアーティストを人選しています。曲によってはコーラスというよりデュエットみたいな感じもしますが、これがまた豪華さを醸し出していて良いんですよね。収録9曲で39分弱が物足りなく感じてしまうほどの傑作だと思います。
自信を持ってお薦め出来る1枚です。機会があったらぜひ聴いてみて下さい。
『PAUL ANKA / WALK A FINE LINE』
01. SECOND CHANCE
02. HOLD ME 'TIL THE MORNIN' COMES
03. DARLIN', DARLIN'
04. NO WAY OUT
05. WALK A FINE LINE
06. TAKE ME IN YOUR ARMS
07. THIS IS THE FIRST TIME
08. GIMME THE WORD (Duet with Karla DeVito)
09. GOLDEN BOY
ピックアップ曲:
「SECOND CHANCE」
P.Anka、D.Foster、M.McDonaldの3人による共作で、アレンジがD.FosterとJ.Graydon。
アルバムの冒頭を飾るナンバーとしては最強の部類に入る曲と言えるかも知れません。メロディーはM.McDonaldが中心になって書かれたと思わせますし、実際コーラスをM.McDonaldが一人で担当しており、彼のアルバムに収録されていても不思議ではないような曲に仕上がっています。
「HOLD ME 'TIL THE MORNIN' COMES」
P.AnkaとD.Foster共作による美しいバラード・ナンバーです。私が1番好きな曲でもあります。
実にD.Fosterらしいメロディーとアレンジのナンバーで、D.FosterがプロデュースしたChicagoのアルバムを聴いている錯覚に陥ります。
それもそのはず、ほぼデュエットという感じのコーラスはPeter Ceteraですから・・・(笑)
AOR系バラード曲のお手本のような曲だと思います。名曲です。
「NO WAY OUT」
P.AnkaとM.McDonaldによる共作です。メロディーも渋いのですが、何よりM.McDonaldとB.Cuomoのアレンジが素晴らしいの一言です。
アレンジ面ではアルバム中で1番良いと思っている曲で、N.EastとL.Sklarのツイン・ベースやE.Wattsのサックスの使い方が絶妙です。
P.Ankaとの相性ということで言えばD.FosterよりM.McDonaldの方が良いような気がしますね。これも良い曲です。
「TAKE ME IN YOUR ARMS」
P.AnkaとD.Foster共作による軽快なナンバーです。特にインパクトが強い訳ではありませんが、リズムが実に心地良いナンバーです。
Pagesの二人によるコーラスと短いけれど存在感たっぷりのS.Lukatherのギター・ソロがたまりません。
本当に良いアルバムなんですが、とても残念なのがラスト2曲なんです。プロデューサーであるDenny Dianteが2曲のアレンジに加わっているのですが、彼の意向なんだろうけど当時ヒットしていた曲の路線を狙い過ぎているというのか、非常にチープな感じに仕上がってしまっていることです。
それまでの7曲の仕上がりが良かっただけに2曲が浮いてしまった感じになっています。曲は悪くはないんですけどね・・・。
なにかの本で読んだんですが、このアルバム、セールスは芳しくなくて、
気合入れてたご本人はとても意気消沈したらしいと。
良い作品は売れる、そういう単純な業界になってもらいたいです、いつの日も。
ドゥービーブラザーズにもTake me in your armsという
曲があるので、もしかしてマイケルマクドナルドつながりの
ポールアンカの作のカバー?
と思いましたが、違いました。
80年代のAOR作品の良いところは、やはり素晴らしいミュージシャン
による素晴らしい演奏だと思うんです。
打ち込みのサウンドって技術の進歩が早い分、古臭く感じてしまうのも早いのですが
人によって演奏されたものって古臭さというのはあまり感じません。
だから今でも十分に楽しめるのかも知れませんね。