今回紹介するのは、日本を代表するPOPシンガーだと信じて疑わないEPOの1980年のデビュー・アルバム『DOWN TOWN』です。リアル・タイムでのEPOとの出会いのアルバムで、思い入れも強く大好きなアルバムです。しかし、これまで他のアルバムを先に紹介してきました。それには理由があります。大好きなアルバムなのは間違い無いのですが、デビュー・アルバムという事で彼女の歌声がその後のアルバムと比較して硬いんですね。出会った時は、比較するアルバムが無かったので別にそんなことを感じてなかったんですけどね。今聴き返すと聴いているこちらが多少緊張してしまいます(笑)
初めてのレコーディングとアルバム・リリースなのだから当然ですし、別の言い方をすればアマチュアっぽさが残ってる初々しいアルバムですね。
プロデュースは、その後のRCA在籍時のEPOのアルバムのほとんどを手掛ける敏腕プロデューサー、宮田 茂樹。アレンジには、林 哲司、清水 信之、富樫 春生、乾 裕樹、山下 達郎という豪華な布陣。ミュージシャンも当時の一流どころをほとんど揃えたと言える豪華さです。洗練されたポップなナンバーの数々は、EPOのヴォーカルはもちろんの事、優れたプロデューサー・アレンジャー・ミュージシャンの手腕によって作り出されたものだと思います。
『EPO / DOWN TOWN』
01. Down Town
02. 約束は雨の中
03. クラクション
04. 日曜はベルが鳴る前に
05. 語愛(かたらい)
06. ポップ・ミュージック ~ Down Town
07. アスファルト・ひとり・・・・・・
08. 水平線追いかけて
09. 珈琲タイム
ご存知シュガー・ベイブの名曲にして、EPOのデビュー曲である01。オリジナルよりも数段POPさが増しているのは、林 哲司と清水 信之コンビのアレンジによる功績が大きいですね。この曲でデビューが決まった頃、たまたまスタジオで山下 達郎に偶然会ったEPOが直接アレンジをお願いしたところ、「非常に思い入れの強い曲なので・・・」と断られたという経緯があるそうです。何とも達郎らしいですね。この曲は駄目でも、他の曲では協力を惜しんでませんからね。
良い意味でアマチュアっぽさを感じる曲02。ファルセット部の声の出し方などに硬さを感じますね。林 哲司のアレンジに助けられた曲と言えるかも知れません。
しっとりとしたバラード曲03。この曲でのヴォーカルは良い感じだと思います。初めて聴いた時にソング・ライターとしても才能あるなと感じた曲でした。富樫 春生のピアノと乾 裕樹のストリングス・アレンジが見事です。
いかにも林 哲司らしいリズム・アレンジの04。今 剛のギター・カッティングも軽快ですし、清水 信之のアレンジのホーンとストリングスとの相性も抜群で、EPOの書いたポップなメロディーを色鮮やかに飾っています。
スケールの大きさを感じるバラード曲05。ヴォーカリストとしての力量を示した感じがします。EPO自身のアレンジが若干オーソドックス過ぎる気がしますが、良い曲です。佐橋 佳幸のギター・ソロが印象的です。
EPOの看板である一人多重録音によるコーラスの原点とも言える06。メドレー形式で歌われているのは、英国のバート・バカラックと評されたトニー・ハッチの作品で、ペトゥラ・クラークが歌って1965年に大ヒットさせた「Down Town (恋のダウンタウン)」です。アナログ盤A面1曲目とB面1曲目の両方に「Down Town」を取り入れているのが洒落てますね。
軽快なポップ・ナンバー01。EPOのアレンジ曲です。05のアレンジに比べるとはるかに良いアレンジですね。渡嘉敷 祐一のドラミングと土岐 英史のサックス・ソロが良いです。
アルバム中で最もEPOらしいメロディーだなと感じた08。こういう曲を歌わせると本当に上手いなと思いますね。清水 信之のアレンジとの相性も抜群です。コーラスに竹内 まりやが参加。
フェード・インで始まる09は、林 哲司のアレンジでウエスト・コースト・サウンド風な仕上がりです。
清水 信之のピアノ1本で歌われるバラード曲10。JAZZYな雰囲気を持った曲で、歌に自信があるからこそピアノ伴奏のみで歌ったのでしょう。短い曲ですが味があります。
アルバムをリリースする毎にどんどん歌が上手くなっていったので、今聴き返すとやはり硬さを感じますね。しかし、01や06のカヴァー曲以外は全てEPOの作詞・作曲であることや、デビュー・アルバムでこれだけのヴォーカルを披露したというのは、EPOが才能豊かなシンガー・ソング・ライターであることは確かです。
RCA時代のEPOは、本当にポップ・センスの溢れた作品が多いのでCITY POP好きな人はもちろん、多くのポップス好きの人にお薦めです。