今回紹介するのは、1982年7月にリリースされた山下達郎自身の選曲によるRCA/AIRレーベル時代のベスト盤『Greatest Hits! Of Tatsuro Yamashita』です。1982年リリースというのは当然ながら、アナログLP盤のリリースです。ジャケット写真は、1997年にリリースされたデジタル・リマスタリング盤です。
何故こんな詳しくリリース時期について述べたかと言うと、実はこのアルバムは裁判沙汰に発展したアルバムだからです。
アナログ盤発売後、世の中はCDの時代へ突入しました。このアルバムも当然CD化されています。
裁判沙汰となった問題のCDは、1990年にBMG(RCA)がリマスタリングを施したとして発売された『Greatest Hits! Of Tatsuro Yamashita』でした。
達郎は、この『Greatest Hits! Of Tatsuro Yamashita』のアナログ盤リリース後、RCA/AIRレーベルからMOONレーベルへ移籍します。
そこで、BMG(RCA)側はオリジナル・マスターからマスタリングせずに、同じ曲目であっても音源が違うベスト盤を勝手に作ってしまったらしいのです。
ところが耳の肥えた達郎フリークからクレームが続出。これに怒った達郎サイドがレコード会社に対して販売差し止めと回収を求めた訴訟を起こしたようです。
実際の裁判では証言台に立った達郎のあまりの熱弁に、裁判官から「もう結構です。」と言われたとか(笑)
自分の作ってきた音楽(作品)に対して、新旧関わりなく責任と愛情を持っている達郎ならではの話ですね。結局1995年に和解し、1997年に達郎自身によるリマスターが施され、書き下ろしライナーノーツにボーナス・トラック3曲を加えて再発されました。
このベスト盤(当然CD盤の方ですが)は達郎フリークには欠かせないアルバムだと思っています。何故なら、このアルバムでしか聴けないテイクが収録されていますし、ボーナス・トラックには伝説の「9 Minutes Of Tatsuro Yamashita」が収録されているからです。
『山下 達郎 / GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』
01. LOVELAND, ISLAND
02. 愛を描いて - LET'S KISS THE SUN -
03. あまく危険な香り
04. RIDE ON TIME (SINGLE VERSION)
05. 夏への扉
06. FUNKY FLUSHIN'
07. WINDY LADY
08. BOMBER
09. SOLID SLIDER
10. LET'S DANCE BABY
11. 潮騒
12. YOUR EYES
- BONUS TRACKS -
13. LOVE SPACE
14. SPARKLE
15. 9 MINUTES OF TATSURO YAMASHITA
1981年のサントリー・ビールのCMソング用に書かれた01。1982年の『FOR YOU』に収録されました。それよりこの曲の凄いのは、『FOR YOU』リリースから20年後の2002年にシングル・カットされたことでしょうね。まさに夏全開の曲です。
1979年のシングル曲で、アルバム『MOONGLOW』に収録されていた02。今聴くと上原 裕、田中 章弘、難波 弘之、椎名 和夫というメンバーのサウンドもどこか懐かしく感じますね。スケールの大きさを感じる曲です。
TBSドラマ「あまく危険な香り」の主題歌03。1982年にシングル・リリースされ、当時はアルバム未収録曲のひとつでした。独特な都会的なサウンドは、カーティス・メイフィールド辺りのノーザン・ソウルを意識したのでしょうか。AIRレーベル最後のシングル曲です。
本人も出演したマクセル・カセット・テープのCMに使われた出世シングル04。何も言う必要の無い名曲ですね。1980年リリースで、青山 純、伊藤 広規というリズム隊との最初のレコーディング曲となります。オリジナル・シングル・バージョンが収録されています。
難波 弘之のアルバム『センス・オブ・ワンダー』の為に書き下ろした曲のセルフ・カヴァー05。私の友人・知人の中に、この曲を好きな人が結構多くいます。この歌詞は達郎には書けない、吉田 美奈子らしい歌詞だと思います。
ご機嫌な(古い言い回しですみません)ファンキー・チューン06。アルバム『MOONGLOW』に収録されてました。1979年当時、こんなファンキーなナンバーを書く日本人アーティストは他にいませんでしたね。このアナログ盤を買って聴いた時、『MOONGLOW』とは違ったテイクだったので驚いた記憶があります。パーカッション等を新たにレコーディングされたリメイク・ヴァージョンです。
1976年のソロ・デビュー・アルバム『CIRCUS TOWN』に収録されていた07。ニューヨーク録音で、アラン・シュワルツバーグ(ds)、ウィル・リー(b)、ジョン・トロペイ(g)、ジェフ・ミノロフ(g)、ジョージ・ヤング(sax)等のメンバーを達郎自身が選定・指名したとか・・・。当時、若干23歳とは思えぬ渋いミュージシャン選びですね(笑)
この曲を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れません!1978年リリースの名盤『GO AHEAD!』に収録されており、シングル「LET'S DANCE BABY」のB面曲だった08。この曲に出会ったお陰で達郎フリークになってしまいました。典型的なポリリズム・ファンクで、田中 章弘のベースには本当にびっくりした事を憶えています。工事現場のSEが入っていないエディット・バージョンが収録されています。
1977年リリースのアルバム『SPACY』に収録されていた09。上原 裕、田中 章弘のリズム隊に坂本 龍一、大村 憲司という凄腕が加わった曲。大村 憲司のギター・ソロの格好良さが際立ってますね。オリジナルは7分を越す大作ですが、3分半に編集したショート・バージョンが収録されています。
キング・トーンズに書き下ろした曲のセルフ・カヴァー10。アルバム『GO AHEAD!』に収録されていますが、この曲がソロになった達郎の初シングル曲でもありました。1979年リリースです。
名曲11は、『GO AHEAD!』の収録曲。ライナー・ノーツによるとトッド・ラングレンやホール&オーツといったイースト・コーストのテイストに憧れて作った曲だとか・・・。
元々は竹内 まりやの為に書いた曲だったが、ボツになり自分でレコーディングしたという12。スケールの大きい英語詞のバラード曲ですね。アルバム『FOR YOU』のラストを飾るにふさわしい名バラード。
ボーナス・トラックの1曲目13は、アルバム『SPACY』に収録されていた曲。村上 秀一(ds)、細野 晴臣(b)、松木 恒秀(g)、佐藤 博(key)という当時(1977年)では最高とも言えるメンバーでのレコーディングです。
『FOR YOU』のオープニング・ナンバー14。こんなにインパクトの強いオープニング・ナンバーは他にないでしょう。あのカッティングを練習した人も結構多いのでは?(笑) 知人から5万円で譲ってもらった茶色いテレキャスターとの運命的な出会いがもたらした1曲だそうです。
このアルバムのハイライトはやはり15ですね。この曲欲しさにこのCD買ったんですから・・・。アルバム『FOR YOU』の発売に際して、プロモーション用に作られたピクチャー・レコードのB面に収録されていた曲です。遊びで作ったという割りには本格的な編集が施されたノン・ストップ・ミックスといった趣きの曲ですね。13曲が取り上げられています。その曲とは、Loveland, Island ~ Funky Flushin' ~ Ride On Time ~ Sunshine ~ Silent Screamer ~ Let's Dance Baby ~ 永遠のFull Moon ~ Bomber ~ Daydream ~ Sparkle ~ Solid Slider ~ Paper Doll ~ いつかの13曲です。当時から欲しかったのですが、限定700枚のレア・アイテムなど手に入る訳も無く、エアチェックしたテープをダビングして聴いていたのが懐かしいですね。この曲がCD化されたのは本当に嬉しかったです。さすがサービス精神旺盛な達郎ですよね。
まさにベスト盤の鏡と言えるベスト盤だと思いませんか?(笑)
ところで12 MINUTES OF TATSURO YAMASHITAというのも存在するようなのですが、ご存知の方いらっしゃいますか?
確かRIDE ON TIMEがAlbum Versionで、SOLID・・・もLONGだった気が、
リマスターとは謳っていても音はあんまし良くないし、
一応、持っては居るんですが当然の事ながら殆ど聞きません(笑)
それから「9 MINUTES OF TATSURO YAMASHITA」は
どうしても聞きたくて、このCDが出る前に
中古屋で大枚をはたいて買ってしまいました(涙)
それから「12 MINUTES OF TREASURES」ですが、一応持ってますよ
アルバム TREASURES用のプロモ盤なので選曲は当然アルバムからです、
曲の並びは覚えてませんがスプリンクラーが入って無かったと思います。
曲間にマイケル富岡のナレーションが入ってます。
余談で奥さんの「15 MINUTES OF IMPRESSIONS」というのも在ります。
裁判沙汰になっていたんですかぁ。。。知りませんでした。このCDは是非買いたいですね。
1990年盤を持っていて、しかも「9 MINUTES OF TATSURO YAMASHITA」も
持っているrsさんはまさに達郎フリークですね(笑)
その上に「12 MINUTES OF TREASURES」まで持っているとは・・・。
素晴らしいですね~。羨ましい限りです。
このアルバムを聴く度に、達郎さんの音楽に対する真摯な態度には
本当に感服しますね。
このCDは買っておいて損は無いですよ。達郎さん自らリマスタリングに
関わっていますから音も良いですし、ボーナス・トラックも魅力ですから・・・。
CDを持ってらっしゃるなら、ぜひライナーノーツの解説を読んでみて下さい。
こんな文面があります。『~15年目にしてようやくの「ちゃんとした形での」CD化です。』と・・・(笑)
この頃は達郎さんアルバムを7~8年リリースしていなかった時期だったと思います。
レコーディングのスタジオが変わったり、裁判があったりで大変な時期だったのでしょうね。
う~~んどこからコメントしようかな?(笑)
>1981年のサントリー・ビールのCMソング用に書かれた01
ラテン系の女性が踊ってるCMでしたね。
曲のリリース前だったのでサントリーへ問合せが殺到したとか...
>1979年のシングル曲で、アルバム『MOONGLOW』に収録されていた02
JAL沖縄キャンペーンのCMでしたね。
3のドラマ観てました。林隆三と紺野美沙子(笑)
4のCM、指鉄砲のシーンありました。
10はライブでは定番ですね。クラッカーのご用意を(笑)
そしてこのアルバムの目玉は15でしょう。
どれも好きですが”Daydream"と"Someday"が私は好きですね。
01は、正直に言ってしまうとそんなに好きな曲では無いのです。
ただ、サントリー・ビールのCMで使われていた時の、映像と音楽の
マッチングが素晴らしかったですね。だから、この曲はあの映像ありき
という感じがします。
04のシングル・レコードのジャケットが大好きなんです。
夕暮れをバックに海の中の達郎さんが指鉄砲のポーズのやつです。
歴代のアルバム・シングルを含めたジャケットの中では1番好きですね。
15は本当に聴きました。エアチェックしたテープをマスターにして、何度
カセットにコピーしたことか・・・(笑)
音なんか最悪でしたが、聴ける歓びの方が大きかったですね。