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山下 達郎_POCKET MUSIC ◇ 2007年 09月 17日
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今回紹介するのは、山下 達郎が1986年にリリースした『POCKET MUSIC』です。このアルバムは、山下 達郎にとっては記念すべきアルバムであろうと思います。初めてのデジタル・レコーディング、コンピューターやシーケンサを使ったデジタル・サウンドの導入という、それまでのバンド・サウンドを軸にアナログなサウンドに拘ってきた達郎が、これからの時代においてデジタル化は避けて通れない道であるなら真っ向勝負といった感じで、果敢にデジタル・レコーディングに取り組んだ興味深い作品だと思います。

今から20年以上も前の話ですから、当然今に比べれば機材やコンピューター自体も非常にプアな環境だったでしょう。それにも関わらず、前作『BIG WAVE』(1984年)から2年もの時間をかけて制作されています。おそらく徹底的に拘る達郎ですから、デジタル・レコーディングに変わったことでマイク1本から全て環境を見直したのだろうと思います。そして完成したこのアルバム、最初に聴いた時には今までで1番地味だなという印象でした。煌びやかなデジタル・サウンドをイメージしていましたが、聴こえてくるのは温もりを感じるようなアコースティックなサウンドを基調にした優しく透明感溢れるサウンドでした。
おそらくデジタルなビートを効かせたサウンドであれば簡単に作れると、達郎自身は思っていたんでしょうね。それよりもアナログ的な温もりや柔らかさを、いかにデジタル環境で表現出来るかに拘ったのではないかと勝手に解釈しています。
聴くほどに味わい深くなる、そんなスルメのようなアルバムだと思うのですが、如何でしょう(笑)

『山下 達郎 / POCKET MUSIC』
01. 土曜日の恋人
02. ポケット・ミュージック
03. MERMAID
04. 十字路
05. メロディー、君の為に
06. THE WAR SONG
07. シャンプー
08. ムーンライト
09. LADY BLUE
10. 風の回廊

当時、フジテレビ系の人気バラエティ番組だった「オレたち ひょうきん族」のエンディング・テーマとしてシングル・リリースされた01。軽やかなポップ・ナンバーで、シュガー・ベイブ時代の名曲「DOWN TOWN」を彷彿させます。

クリアで瑞々しいアコースティック・ギターのサウンドが心地良い02。歌詞の中に出てくる「透き通る 午後の風に」というフレーズがピッタリなミディアム・チューンです。間奏のフリューゲル・ホーンのソロに、ジョン・ファディスを起用しているのが何とも贅沢ですね。村田 和人がコーラスで参加しています。

達郎のパートナーとも言えるアラン・オデイの作詞による英語詞のナンバー03。前作『BIG WAVE』に収録されていても違和感がなかったであろうナンバーです。打ち込み主体のサウンドですが、ギターのカッティングなども心地良く、デジタル特有の尖った印象を受けないサウンドが良いですね。

達郎の音楽というより、竹内 まりやっぽい感じがした04。それもそのはずで、ゲスト・ヴォーカルで竹内 まりやが参加しています。コーラス・ワークが見事な1曲。

伊藤 広規のベースのプレイが印象的なポップ・チューン05。達郎は相当グロッケンが好きなんでしょうね、本当に効果的にグロッケンを使いますね。グロッケンを音を聴くと、達郎らしいなといつも感じます(笑)

このアルバムで1番衝撃を受け、大好きなナンバーがこの06です。戦争を題材にした、ある意味暗く重たい曲ですが、自分の言葉で歌を作るという達郎の意思や拘りを感じないではいられなかった曲でもあります。凄い曲だと思いますね。この曲を聴いていると目頭が熱くなる時があります。青山 純と伊藤 広規の重厚なリズム、悲しみを背負った人の叫びを代弁しているかのような、大村 憲司の素晴らしいギター・ソロは圧巻ですね。ライブ盤『JOY』でのヴァージョンも大好きです。

達郎のプロデュースによるアン・ルイスの1979年リリースのアルバム『PINK PUSSY CAT』に提供した曲のセルフ・カヴァー07。達郎と土岐 英史だけで演奏されているしっとりとしたJAZZYなバラード曲です。リリカルな土岐 英史のソプラノ・サックスが素晴らしいです。

ムーディーな08。ファルセット・ヴォイスが美しく、夜にぴったりなナンバーですね。打ち込みとギター等、達郎一人で奏でられたサウンドが柔らかく、秋風の気持ち良いちょうど今頃聴くのにお似合いのナンバーです。

スケールの大きなゴスペル調の英語詞のナンバー09。イントロのピアノのプレイはもちろん佐藤 博。外人のコーラスを迎え、よりゴスペル調な雰囲気を出しているコーラスが素晴らしいです。そして、ワン・アンド・オンリーな佐藤 博のピアノが文句無く凄いですね。達郎のエレクトリック・シタールも効果的です。

当時、ホンダ・クイント「インテグラ」のCMで使われていたシングル・リリース曲10。シンプルな演奏ですが、その分十八番の一人多重コーラスの迫力を感じるナンバーですね。コーラスで風を表現しているアイディアというのは、まさに達郎ならではでしょう。

このアルバムには、FUNKYでダンサブルなナンバーは1曲もありません。達郎のことですから、作ろうと思えば簡単に作れるはず。しかし、このアルバムにはあえて意図的に入れなかったのだろうなと思います。
このアルバムではデジタルな機材を使用して、自分が理想とするアナログっぽいサウンドを作れるかということに果敢に挑戦したアルバムなんだろうと思います。好みで言えば、アナログ録音時代の作品の方が圧倒的に好きな作品が多いのですが、最近の達郎サウンドとの橋渡し的なアルバムとして非常に重要だと思いますし、アナログ時代の達郎サウンドを1度リセットするのに重宝しているアルバムです。
私の持っているCDは1986年リリース盤ですが、1991年にボーナス・トラック付きでリマスター盤が発売されています。リマスター盤は音もかなり良いようですから、これから聴きたいと思っている人はリマスター盤がお薦めです。私はリマスター盤は未聴ですが、音的には別に不満はありません。それほど良く出来ているアルバムなんですね。
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by kaz-shin | 2007-09-17 13:12 | CITY POP / J-AOR系 | Trackback | Comments(4) | |
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Commented by kotaro at 2007-09-18 02:57 x
達郎にとり、一里塚的な意味をなした作品ですね。
このアルバムを世に問い、納得したのかそれからは、
頑固な程に自分のペースでしか歩まなくなりました。

世がバブルに向かって階段を駆け上がる中、音楽界の数年後や
未来も見えてしまったのかもしれません。

デジタルはMIDIの規格ができて数年、テクノブームが終わりシンセが百花繚乱だった時代でした。 どこのアルバムにもDX7の音とか(笑)

最初と最後がTVで流れてるタイアップというのも吃驚でしたが
近藤真彦からKinki Kidsに至るジャニーズとの流れも顕在化して、「ああ達郎は音楽マニアが自慢するミュージシャンではなくなった」のだと思いました。

Commented by kaz-shin at 2007-09-19 00:29
kotaroさん、コメントありがとうございます。
>、「ああ達郎は音楽マニアが自慢するミュージシャンではなくなった」のだと思いました。
この気持ち、凄くよく分かります。事実、このアルバムが発売された当時は
達郎も地味になったと感じ、あのファンク路線は聴けないかも知れないという危惧さえ感じました。
でも、自分も年齢を重ねて時間が経ってから改めて聴き直すと、意外に良いなぁと思えました。

kotaroさんも書かれたように、音楽界の未来が見えてしまっていて、残っていくのはどういう音楽なのか?
を達郎さんなりに見据えていた時期の作品なんだろうと思います。
今は堂々と好きと言えるアルバムになりました(笑)
Commented by rs at 2007-09-28 11:29 x
1991年盤のボーナストラックなかなか良い曲ですよ、
きっと同時期に作られた曲だと思いますけど、
ポケットミュージックに収録されていても違和感はありません。

それからシングルカットされている曲は
VERSIONが同じという事です、
長さが若干違う程度だったような・・・。
Commented by kaz-shin at 2007-09-29 13:00
rsさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自分で作った作品でありながら、過去の作品に興味を持たなくなっていsまうアーティストの多い中、
達郎さんは、自分の作った作品は新旧問わず愛着を持ち、常に良い音でリスナーに届けようとする
姿勢は本当に素晴らしいなと思います。
そんな達郎さんがリマスターを施した1991年盤も聴いてみたいですね。
でも、もう少し待てばMOONレーベル時代のリマスター盤がまたリリースされるのではなかと・・・(笑)
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