今回紹介するのは、3月10日付けの記事(コチラ)にコメントを寄せてくれたymoymoさんが、コメントで少し触れてくれたセイル・アウェイの唯一のアルバム『SWEET SWEAT』を紹介しましょう。偶然ymoymoさんがセイル・アウェイに触れてくれたんですが、当初から今回紹介するつもりでいたんですね。まるで私の単純な思考回路を見透かされているような気分です・・・(笑)
セイル・アウェイは小室 和之(現:和幸)、大久保 龍、西川 一彦の3人組です。元々3人は1970年代半ばより一緒に音楽活動をしており、1977年にブルーベリージャムというグループでデビューしてるようです。1981年にブルーベリージャムが解散し、3人がセイル・アウェイを結成したという経緯があるようです。
シングル・デビューは1981年ですが、アルバムのリリースは翌1982年3月です。今までCD化されていませんでしたが、今年の2月20日に紙ジャケットで初CD化されました。
私がセイル・アウェイを知ったのは、杉 真理のバンドのコーラス要員としてでした。もちろん彼等のオリジナル・アルバムを聴くのも初めてのことです。杉 真理のアルバムでも素敵なコーラスを聴かせてくれていましたし、私のCITY POPのバイブル本とも言える金澤 寿和氏監修の「Light Mellow 和モノ669」にも紹介されていたんで、いつかは聴いてみたいと思っていましたが、割と早く実現しました。
セイル・アウェイの音楽の特徴は何と言っても、その美しいコーラス・ワークです。ビーチ・ボーイズが大好きだったというだけあって、まさにビーチ・ボーイズ風コーラスがあったり、CITY POP路線があったり、ソフト・ロック路線があったりと、これから夏に向けてピッタリな爽やかなアルバムに仕上がっています。
ボートラを含む全12曲中6曲がメンバーのオリジナルで、残り6曲はあの天才作曲家・筒美 京平が書いています。作詞はメンバーの他に、大貫 妙子(4曲)、松本 隆(2曲)等が提供しています。ミュージシャンも豪華で、林 立夫(ds)、田中 清司(ds)、森谷 順(ds)、渡嘉敷 祐一(ds)、長岡 道夫(b)、岡沢 章(b)、田辺 モット(b)、杉本 和弥(b)、山岸 潤史(g)、村松 邦男(g)、今 剛(g)、松下 誠(g)、矢島 賢(g)、大谷 和夫(key)、富樫 春生(key)、難波 弘之(key)、浜口 茂外也(per)等という錚々たるメンバーです。
『SAIL AWAY / SWEET SWEAT』
01. Sail Away
02. ただのLove Song
03. 遠く渚から
04. Midnight Rain
05. Hello Summer, Good-bye
06. もう一度抱きしめたい
07. 離れていても
08. Wind Song
09. This Guy - 朝が来る前に -
10. パジャマを着た天使
Bonus Tracks
11. Sail Away (Single Version)
12. From Monday till Sunday
風を感じるクルージング・ナンバー01。ファルセットを駆使したサビのメロディーが印象的な1曲です。曲調としては昭和30年代のGSサウンドを彷彿させる、そんな感じです。
軽快なポップ・チューン02。どこか懐かしさを感じるナンバーです。01、02ともにメンバーのオリジナル曲。
作詞:大貫 妙子、作曲:筒美 京平、編曲:萩田 光雄によるCITY POPナンバー03。ドゥーワップ風コーラスに今 剛の軽快なギター・カッティングが実に心地良い1曲です。やはり筒美 京平は職人(プロ)という言葉がピッタリ来る作曲家で、やはり間違い無く"天才"です。
作詞:松本 隆、作曲:筒美 京平、編曲:光雄による04もCITY POPナンバーです。萩田 光雄の洒落たアレンジと、安部 恭弘に似たヴォーカルが光る1曲です。大好きな1曲。
オールディーズ風ナンバー05。思う存分コーラス・ワークが堪能出来る1曲です。イメージは完全にビーチ・ボーイズといった感じです。ベタですが、夏の浜辺で聴けばまさにぴったりでしょう。村松 邦男のギターが最高ですね。
作詞:大貫 妙子、作曲:筒美 京平、編曲:萩田 光雄による06。筒美 京平の十八番とも言える歌謡曲チックなナンバーです。旅番組のテーマ曲なんかに使ったら似合いそうなナンバー。個人的には今ひとつなんですが、3枚目のシングル曲のようです。
07と同じ作家陣による07。これが実にメロウなナンバーなんです。今 剛のギター・カッティングが入ると俄然CITY POP風な感じになるのが良いですね。
メンバーの作品08。難波 弘之のシンプルなんですが、ウエスト・コースト・サウンドを彷彿させるアレンジが秀逸なポップ・ナンバーです。
4度登場の大貫、筒美、萩田トリオによる09。筒美 京平のメロディーは、やはり一味違います。本当に色んなタイプの曲を書き分けるのが上手いですよね。間奏での今 剛のソロが格好良いです。
松本、筒美、萩田トリオによる10は、彼等の2ndシングル曲だったようです。元々はレターメンに書いた曲を日本語に直してカヴァーしたという事です。TV番組のテーマに起用されていたようですが、私は知りませんでした。
01のシングル・バージョン11。おそらくテイクは同じもので、単にミックス違いという気がします。セイル・アウェイとしてのデビュー・シングル曲になります。
11のB面曲だったという12。コーラス・ワークを軸にしたオールディーズ風な味わいのあるナンバーです。
アルバムを通して爽やかなイメージですし、筒美 京平の書いた曲は素晴らしいのですが、今ひとつインパクトに欠ける感じも否めません。個人的には持ち味であるコーラス・ワークをもっと全面に出した方が良かったような気もします。コーラス・ワークは非常に良いのですが、メンバー各々がソロで歌うと若干弱い感じがします。声質からしてもコーラス向きなのかも知れません。05みたいなコーラス・ワークは本当に見事ですから、コーラスが好きな人にはお薦めです。
筒美 京平の作品が好きな人にも聴いて欲しいアルバムですね。
本当にこの人は天才です。言葉は悪いですが、洋楽を一部をパクりながらもオリジナルに仕上げてしまうそのセンスの良さを感じさせるのは、作曲家多しとも筒美 京平と林 哲司くらいのものだと思っています。
極端かも知れませんが、筒美メロディー、林メロディーに出会っていなければ、ここまでJ-POPに嵌ることは無かったと思っています。
一口に"オリジナリティ"と言っても難しい問題で、これが"オリジナリティ"であるという答えがなかなか出ませんよね。
ただ私が思うに、世に音楽を届けるアーティストとしては、自分しか出来ない音楽を追い求めるのは当然だと思います。
それがアーティストの理想なのかも知れませんが、聴く側は果たして"オリジナリティ"を求めているのか?
となると疑問なんですよね。私を含めて多くの音楽好きは"良い曲"に出会いたい、自分にとっての"名曲"に出会いたいという単純なことなんじゃないかと思っています。
"オリジナリティ"に拘リ過ぎて視野が狭くなってしまって、自由奔放な発送が出来なくなってしまう危険性があるのかなと思います。
言葉は悪いですが、筒美京平さんはパクリの天才だと思っています。決して悪い意味ではありません。
むしろ尊敬しているんです。上手く洋楽を取り入れながらも、提供するシンガーやアーティストの個性に合わせた曲が書けるという才能は、立派な筒美京平オリジナルだと思っているのですが、如何でしょう(笑)