今回紹介するのは、1985年にアイドル歌手としてデビュー、その後アーティスト路線で現在でも活動を続けている森川 美穂が1995年にリリースした通算13枚目となるアルバム『HALLOW』です。
私が初めて聴いた彼女のアルバムは、VAPから東芝EMIに移籍した第一弾(通算7枚目)となる『Vocalization』でした。この時は彼女を知っていた訳ではなく、単にアルバム・タイトルとジャケット写真に魅せられて購入したというのが正直なところでした。歌は上手いなとは思いましたが、何故か印象に残りませんでしたね。今回紹介するアルバムもリアル・タイムで購入したものではありません。4~5年位前にふと中古店で見つけて、値段も手頃だったので購入したものです。
アルバムに収録されている曲の多くがTV番組やCMとのタイアップ曲ということもあり、キャッチーな曲が多いです。しかし、大ヒットするようなインパクトの強い曲はありません。
それでも幅広いタイプの曲と、それを歌いこなす森川 美穂のシンガーとしての実力と魅力を感じることの出来るアルバムだと思います。
『森川 美穂 / HALLOW』
01. ふたり
02. なんだかなぁ・・・
03. Close Your Eyes
04. 心の行方 ~I Believe~
05. 風の中へ
06. 素直に笑えない
07. Truth ~本気ならね
08. プリズム
09. 夏の気配
10. あふれる想いのすべてを・・・
11. Close Your Eyes ~Album Version~
作詞:森川 美穂、作・編曲:岩崎 元是による森川 美穂の一人多重録音によるアカペラ・ナンバー01。岩崎 元是らしいキャッチーなメロディーとコーラス・アレンジが印象的な1曲です。かなり手間と労力をかけたのだろうと思われるコーラスは、重厚さは欠けますが非常に美しいですね。ただ低音域に関しては、イコライジング等の処理が施されているのか別人(男性の声)のように聴こえるのが気になりましたが・・・。
90年代らしい軽快な打ち込みのサウンドと、明るくキャッチーなメロディーが楽しいポップ・チューン02。サウンド的には全盛期の横山 輝一を彷彿させます。軽妙な角田 順のギター・カッティングや佐々木 久美、岩崎 元是、比山 貴詠史のコーラス・ワークも聴き所です。作詞:森川 美穂、作曲:水野 雅夫、編曲:岩崎 文紀。
ユーロ・ビート系のダンス系ナンバー03。作詞:本庄 哲男、作曲:久保田 朱美、編曲:林 有三によるナンバーで、林 有三によるプログラミングとシンセが中心になっています。メロディー的には悪くは無いのですが、如何せんこういうユーロ・ビート系は苦手なもので・・・(笑)
作詞:森川 美穂、作曲:小森田 実、編曲:小林 信吾(Cho.arr:小森田 実)によるGirls Popナンバー04。小森田らしい曲と言えるかも知れません。この曲も打ち込みとシンセ、小林 信吾のキーボードだけの構成で、ダンサブルな仕上がりになっています。小森田 実と森川 美穂のコーラスがTRFの曲を思い出させます。
作詞:森川 美穂、作曲:青木 紀、編曲:林 有三によるバラード・ナンバー05。聴き易いメロディーのナンバーです。古川 望(g)、高橋 教之(b)、大久保 敦夫(ds)が加わり、中盤以降ヘヴィーなサウンドを聴かせてくれます。もっとしっとりと仕上げてもらった方が私好みですね。
作詞:北川 清子、作曲:久保田 朱美、編曲:福田 裕彦による06。全編打ち込みによるダンサブルなナンバーですが、森川 美穂のパワフルなヴォーカルに比べ、グルーヴ感の乏しいアレンジのバランスが悪く、惜しい気がしますね。打ち込みというのは、ミュージシャンの感性が入らない分、アレンジャーのセンスがそのまま音になりますから、センスの良し悪しが重要ですね。
作詞:坂田 和子、作曲:南 利一、編曲:小林 信吾によるダンサブルなナンバー07。同じ打ち込みでもギターのカッティングを入れることや、シンセ・ベースのフレーズ次第でかなり違って聴こえるものです。この辺りは流石に小林 信吾だと思います。間奏でのキーボード・ソロもかなり格好良いです。
作詞:森川 美穂、作曲:岩崎 元是、編曲:加藤 みちあきによるポップ・チューン08。岩崎 元是の書くメロディーは本当に耳に馴染んでくるものが多くて、安心して聴けます。生のホーン・セクションと八木 のぶおのブルース・ハープがフィーチャーされているのですが、如何せん打ち込みのリズム・アレンジがチープな感じなのが残念です。岩崎 元是がアレンジしていたら随分違ったモノになっていたでしょうね。
作詞:森川 美穂、作曲:田畑 朋実、編曲:加藤 みちあきによるサマー・ポップ・チューン09。軽やかなメロディーがとてもキャッチーで、チープな打ち込みサウンドも気になりません。どうしても打ち込みのサウンドって、音の広がりとか深みみたいなものが感じられない平面的な音に感じてしまいます。私が打ち込みが苦手なのもこの点が大きいですね。
作詞:森川 美穂、作曲:小森田 実、編曲:京田 誠一によるバラード・ナンバー10。エルトン永田のピアノにストリングスというシンプルな演奏ですが、メロディーを活かしているところは京田 誠一のセンスの良さでしょうね。広谷 順子、木戸 やすひろ、比山 貴詠史というベテラン・コーラス隊のコーラスも見事です。
03を福田 裕彦がリ・アレンジした11。生のベース(岡沢 茂)、ギター(山口 達哉)を加え、一層グルーヴ感が出て03よりもはるかに仕上がりは良いと思います。
このアルバムが制作された年代を考えれば仕方の無いことかも知れませんが、個人的にはどの曲もメロディー的には良い曲が多いと思うのですが、そのメロディーを活かしきれていないアレンジが多いのが残念に思います。逆にこのような打ち込みのサウンドを聴いて育った若い世代の方なら違和感なく聴けるアルバムだと思います。
私は01、02、07、08、09、10辺りは結構好きですね。中にはアレンジを変えて欲しいと思うのもありますが・・・(笑)
いずれにせよ、パワフルなヴォーカルは健在で、森川 美穂の歌の魅力が詰まったアルバムだと思います。もし興味があったら聴いてみて下さい。
この方も実は聴いてみたい方ですね。非小室系的な90年代の都会的な打ち込みサウンドが好きな私にはストライクだと思います。
おっしゃる通り、打ち込みはセンス次第だと思いますね。特にボトム(ドラム&ベース)の部分が左右すると思います。さらに言えば、打ち込みの音も、ギターのカッティングやホーンセクションを取り入れることで、深みは増していく気がします。
1曲1曲を聴いていると、結構良い曲が多くて良いなぁと思うんですけど、
アルバムとして良いという印象が残らないのが森川さんだなという気がしますね。
実はVAP時代の音源はほとんど聴いたことが無いので、ぜひとも聴いてみたいです。
シングル曲は「おんなになあれ」とかは知っているのですが・・・。
仰るようにアルバムを通して、なかなかカラーというかコンセプトみたいなものが見えてきませんね。
器用に色んな歌が歌えるので、的を絞り込めていないみたいな感じなんでしょうかねぇ。
少々勿体無い気がしますね。
このアルバムも割りと良いメロディーの曲が多いのですが、やはりアレンジが若干つまらないですね。
色んな人にアレンジを依頼するのも面白いのですが、一人に絞るともっと纏まった感じが出たのかも知れません。
逆にデビュー・アルバムはどんな感じですか?
VAP時代の音源を私も探して聴いてみたいと思います。
まつのすけさんなら割と聴けると思いますが、それでもアレンジは物足りないと感じると思いますよ。
私の場合、ユーロ・ビートのようなただ単調な打ち込みが苦手なんですね。
ですから仰るように、生の楽器とうまく組み合わせてより深みとか厚みを出しているような打ち込みは苦になりません(笑)
同じ打ち込みのアレンジャーでも打ち込みだけで育ってきた人と、生楽器の良さを知っている人の差が出てくるでしょうね。
だから角松さんの打ち込みには嫌悪感がないのでしょうね。
渡瀬マキとかバンド系にならなくて、この人は正解かなと思ってました。
息の長い女性歌手、「B」の魅力をいつも享受させてくれます。
TVで歌以外の出番は少なく、ラジオとヴォーカルが彼女の仕事。
でも週刊誌のグラビアは時々出ていたから写真は好きなのでしょう。
ロックでもないですね。強いて言えば歌謡ロック。
でも歌心のありようとして尊敬しているのはおそらく岩崎宏美あたりが
頂点ではないでしょうか。
香坂みゆきも最初はヒロリンフォロワーでした。
この系統、系譜はジャパンオリジナルの音楽文化でしょうね。
もうちょっと昔と言うと、やはりVAP時代ですか?
私はVAP時代の音源を聴いたことが無いので、機会があればぜひ聴いてみたいです。
歌い手にというのは、歌に関する実力があってもやはりカリスマ性に欠けると一時的なヒットはあっても長くは続かないようですね。
それはそれで面白い部分ではありますが、やはり常に一線で活躍出来る歌い手というのは
実力以外にも人を惹き付ける魅力を持っている人なんでしょうね。
森川美穂さんを最初に知ったのは、「目覚めたヴィーナス」という曲。1992年リリースで保険会社のCMソングなんですが、ヒットはしてないと思います。あとの記憶だと、後の「夢がMORIMORI」という番組。キックベースですね。
さて、サウンド面のほうですが、このアルバムは好きなほうですね。名うてのミュージシャンが参加してくれているのが嬉しいですね。90年代に出したアルバムの中でも、いい作品がありまして。これの他に私が薦めるのは「FREE STYLE」(1992年)、「情熱の瞳」(1994年)、「Solista」(1996年)自分としてはお薦めですね。打ち込みの少なさを考えて選びました。
「FREE STYLE」
アレンジャー:小林信吾さん、Dr.55、佐藤 準さん、松本晃彦さん、中村 哲さん、新川 博さん
ミュージシャン:今 剛さん、松原秀樹さん、長谷部 徹さん、斉藤ノブさん、山木秀夫さん、高水健司さん、浦田恵司さん、迫田 到さん、松下 誠さん、松原正樹さん、浜口茂外也さん、美久月千晴さん、本田雅人さん、数原 晋さん、小林正弘さん、横山 均さん、村田陽一さん、Jake.H.Conceptionさん など
「情熱の瞳」
アレンジャー:佐藤 準さん(プロデュース)、米光 亮さん
ミュージシャン:青山 純さん、美久月千晴さん、高水健司さん、今 剛さん、中西康晴さん など
「Solista」
アレンジャー:小林信吾さん(プロデュース)、添田啓二さん
ミュージシャン:沼澤 尚さん、村上-ポンタ-秀一さん、高水健司さん、今 剛さん、斉藤ノブさん、小林正弘さん、中川英二郎さん、小池 修さん、Jerry Hey Hornsなど
が参加してます。
森川さんのアルバム紹介ならびに参加ミュージシャンの詳細まで教えて下さり、本当にありがとうございます。
『FREE STYLE』は持っていますが、他の2枚は未聴です。
BOOK OFFでも比較的森川さんのアルバムは入手しやすいので、今度探してみます。
実は最近、VAP時代の2ndアルバム『おんなになあれ』を入手しました。
流石に250円では買えませんでした(結構良い値段でした)が、VAP時代の音源を聴きたかったので見つけた時は嬉しかったですね。
いつか紹介記事は書きたいなと思っています。
了解しました。今度BOOK OFF巡りする時に探してみますね。