
先日、林田 健司のセルフ・カヴァー・アルバム『WORKS』を取り上げたばかりですが、今回も提供曲のセルフ・カヴァー集を紹介しましょう。
今回紹介するのは、大沢 誉志幸が1994年にリリースしたセルフ・カヴァー・アルバム『Collage』です。
大沢 誉志幸は1981年にバンドでデビュー。しかし成功せず、1983年にソロ・デビューを果たします。彼の存在を意識したのは、1984年のヒット曲「そして僕は途方に暮れる」からでしたね。元々彼の歌声というのが苦手だったのですが、彼の3枚目のアルバム『CONFUSION』はレコードでよく聴きました。
歌声の苦手意識からか、彼自身のアルバムはほとんど所有していなかったのですが、作曲家としての才能には一目置いておりましたので、この提供曲を集めたセルフ・カヴァー・アルバムに興味を持ち購入したものです。
おそらく作曲家としてメロディーを書いている時はアーティストとしての個性を抑制しながら、提供するアーティストのイメージを大切にしているはずです。そんな自身のアーティスト色を抑えた楽曲をアーティスト自身が歌う時にどのようにイメージを払拭するのか、あるいは抑制を開放するのかを楽しめるのが提供曲のセルフ・カヴァー・アルバムの面白いところだと私は思っています。そういう意味では非常に本作は面白いアルバムだと思いますね。
このアルバムで取り上げているのは、中森 明菜、吉川 晃司、沢田 研二、鈴木 雅之、本木 雅弘、山下 久美子に提供した楽曲10曲です。オリジナルを知らない曲もありますが、知らなくても十分楽しめると思います。中古店で割りと見かけるアルバムですから、興味があったら聴いてみて下さい。特に私のように大沢 誉志幸に苦手意識をお持ちの方にはお薦めですよ(笑)
『大沢 誉志幸 with CAMELEONS / Collage』
()内は提供アーティスト名
01. 1/2の神話 (中森 明菜)
02. ラ・ヴィ・アンローズ (吉川 晃司)
03. 晴れのちBlue Boy (沢田 研二)
04. プライベートホテル (鈴木 雅之)
05. Just Feelin' Groove (鈴木 雅之)
06. ガラス越しに消えた夏 (鈴木 雅之)
07. No No サーキュレーション (吉川 晃司)
08. 真夏の夜にタンゴ (本木 雅弘)
09. おまえにチェックイン (沢田 研二)
10. 時代遅れの恋心 (山下 久美子)
ピックアップ曲:
「1/2の神話」 / 作詞:売野 雅勇、作曲:大沢 誉志幸
ご存知中森 明菜が4枚目のシングルとして1983年にリリースされた曲ですね。ヘヴィーなロック調にアレンジされており、イントロだけでは「1/2の神話」だとは気付かないでしょう(笑)。大沢 誉志幸がこの曲を書いていた時のアレンジのイメージはきっとこういう感じだったのではないかと思える程、メロディーとハード・ロック調のアレンジがピッタリな感じです。アン・ルイスの歌謡ロック路線を彷彿させます。
「ラ・ヴィ・アンローズ」 / 作詞:売野 雅勇、作曲:大沢 誉志幸
1984年にリリースされた吉川 晃司の3枚目のシングル曲。実は私吉川 晃司が大の苦手でして、曲は当然知っていましたが良いとは思ってはいませんでした。しかし、この大沢ヴァージョンは実に良いですね~(笑)。吉川 晃司のトゲトゲした感じが無く、心持ちゆったりした感じがメロディーとよくマッチしています。こうやって聴くと良い曲です。新たな発見と感動を与えてくれた1曲でした。
「晴れのちBlue Boy」 / 作詞:銀色 夏生、作曲:大沢 誉志幸
ジュリーの1983年のシングル曲。この曲以降のジュリーの曲で覚えているのは正直なところありません。天下のジュリーも人気が翳り始めたのがこの頃だったように思います。ある意味大沢 誉志幸らいい曲だと思いますが、結構ジュリーにも似合っていたんではないでしょうか・・・。
「ガラス越しに消えた夏」 / 作詞:松本 一起、作曲:大沢 誉志幸
1986年の鈴木 雅之のソロ・デビュー・シングル曲ですね。名曲です。大沢 誉志幸は、アコースティック・ギター1本の弾き語りスタイルで歌っています。演奏のシンプルさがメロディーの良さを際立たせているような気がします。夏の終わりの何となく寂しい感じが漂っています。
「時代遅れの恋心」 / 作詞:下田 逸郎、作曲:大沢 誉志幸
山下 久美子が1982年にリリースした4thアルバム『抱きしめてオンリィ・ユー』に収録されていた曲です。何ともほのぼのとした下田 逸郎の歌詞がメロディーに溶けてるという感じが絶妙です。今まで大沢 誉志幸の歌声は苦手だと思っていたんですが、このアルバムを聴いてそんな苦手意識が薄れた気がします。