
今回紹介するのは、いしだ あゆみが1977年にティン・パン・アレイ・ファミリーとの共同名義でリリースしたCITY POP黎明期の1枚とも言える『アワー・コネクション』です。
プロデュースは作詞家の橋本 淳で、もちろん全曲の作詞を担当しています。作曲は細野 晴臣が6曲、萩田 光雄が6曲、アレンジに関しては細野 晴臣が1曲、萩田 光雄が6曲、細野 晴臣と萩田 光雄の共同名義が5曲となっています。
都会で暮らす大人の女性の心情を橋本 淳が書き上げ、歌謡曲とは一味違うメロディーとアレンジによって歌手・いしだ あゆみの新しい魅力を引き出そうとしていたのでしょうね。
このアルバムで素晴らしい演奏を聴かせてくれるのは、当然ティン・パン・アレイを中心とした素晴らしいミュージシャン達で、細野 晴臣(b、a-g)、鈴木 茂(g)、林 立夫(ds)、矢野 顕子(key)、岡田 徹(key)、佐藤 博(key)、羽田 健太郎(key)、ジェイク・H・コンセプション(sax)、浜口 茂外也(per)、吉川 忠英(a-g)、吉田 美奈子(cho)、山下 達郎(cho)という当時ととしては最高の顔触れと言えますね。
『いしだ あゆみ&TIN PAN ALLEY FAMILY / アワー・コネクション』
01. 私自身
02. ひとり旅
03. 六本木ララバイ
04. ダンシング
05. バレンタイン・デー
06. 黄昏どき
07. 真夜中のアマン
08. 哀愁の部屋
09. ウィンター・コンサート
10. そしてベルが鳴る
11. ムーン・ライト
12. バイ・バイ・ジェット
鈴木 茂のギターと細野 晴臣のベースのコンビネーションが渋い01。語りの部分と気怠い感じのヴォーカル部分とのコントラストの強さが聴く者を惹きつける、そんなクールなナンバーですね。今更ながらですが、鈴木 茂のギターは良いですね。
ゆったりとしたグルーヴ感がたまらない02。どことなくフォーキーなメロディーに対して、ソウルフルなアレンジが施された演奏との対比が面白い曲です。
萩田 光雄によるボッサ調のアレンジが秀逸な03。鈴木 茂のオクターブ奏法が印象的なナンバー。一歩間違えれば陳腐な歌謡曲風になってしまいかねないメロディー・ラインなんですが、実に渋いボッサ・ナンバーに仕上がっていますね。
細野 晴臣らしいほのぼのとしたメロディーの04。山下 達郎と吉田 美奈子のコーラスが耳に残る独特な軽さが心地良いナンバー。
大人の女の色香が漂ってきそうな雰囲気のJAZZYなナンバー05。他ならぬいしだ あゆみだからこそ似合う1曲と言えるかも知れません。
イントロなどはまんまCITY POPな感じの06です。キャッチーなメロディーといしだ あゆみの低音域の声が魅力的な1曲です。当時のティン・パン・アレイの面々のセンスや演奏技術の高さに改めて驚かされます。
細野 晴臣らしいオリエンタルなムードの漂う07。軽やかなリズム・アレンジで、派手さはありませんが林 立夫のドラミングが見事です。
スパニッシュ風なギター・カッティング、凝ったベース・ライン、そして哀愁漂うメロディーが印象的な08。この曲もアレンジ、演奏力の高さが際立っているナンバーですね。
素晴らしいスライド・ギターを堪能できる09。アーシーな演奏が魅力です。
萩田 光雄と言えば編曲家というイメージが強いですが、このアルバムでは作曲家としての非凡な才能を見せてくれます。この10もそんな曲のひとつではないでしょうか。メロディー、演奏、歌が絶妙にマッチしているところが魅力的です。
メロウなナンバー11。細野・萩田コンビのアレンジですが、この曲ではおそらく萩田のアレンジであろうストリングスの美しさと使い方の上手さが際立っていますね。
アルバムの中でも強烈な個性を放っている細野 晴臣の作曲による12。メロディーの展開も面白いですし、リズム・アレンジにも細野 晴臣らしさを感じます。山下・吉田コンビのコーラスも聴き所です。
このアルバムを言葉でそのように表現すれば良いのか、非常に難しく悩んでしまいます(笑)
ただはっきり言えるのは、聴けば聴くほどにその魅力に嵌っていく、そんな感じかも知れません。特にティン・パン・アレイ・ファミリーの面々の高い音楽センスと演奏技術は、確実にJ-POPの歴史を変えたんだというのを再認識させられました。
それまでの歌謡曲というのは、レコード会社専属のオーケストラによって演奏されているのが当たり前でしたが、ティン・パン・アレイを始めとした素晴らしいミュージシャンが続々と出現したことで、僅か5~6人という少数編成による演奏の歌伴でも、それまで何十人という編成で演奏された歌伴を凌駕してしまうという事実は、当時制作に関わっていた業界人にとってはショッキングであり、驚きだったろうと思います。
私は当時の素晴らしいミュージシャン達に出会えたことで、邦楽を真剣かつ幅広く聴くようになり、今ではこんなブログを解説するまでに至りました(笑)
この時代のこういうアルバムは、私にとっても宝と言える1枚なんです。

年末に引越しをしてネットがずっと繋がりませんでした。
このアルバムは思い出があります。昔よく通ったバーのマスターに
薦められて借りて気に入りました。
あゆみさんの軽い脱力感、ほんとうに大人の世界だと憧れました。
ティンパンの企画モノとしてはもう1枚、雪村いづみさんのがあり、
これもいいですよ。
蘇州夜曲なんて、一発で大好きになりました。
全曲服部良一ヒットメドレーですがお勧めします。
では、今年もよろしくお願いいたします。

雪村いづみさんのティンパンモノは知っていましたが、
いしだあゆみさんの、このCDも良さそうですね!
萩田光雄さんは好きな編曲家なのですが、
そういや作曲した作品を聴いたことがないかも…。
引越しは落ち着かれましたか?
バリバリのCITY POPでも無く、歌謡曲でも無い、独特な世界観のある
アルバムですね。
大人が楽しめる、あるいは楽しんで欲しい1枚だと思ってます。
雪村さんのアルバムも大好きで、過去に紹介してます。
拙い記事ですが2005年12月13日にアップしています。
http://musicave.exblog.jp/2171316
良かったら読んでみて下さい。
このアルバムは確か2007年4月に再発されているので、比較的入手しやすいと思います。
ぜひ聴いてみて下さい。
私も萩田さんがこんなに沢山の曲を書いているアルバムに出会ったのは
初めてでした。
なかなか良い曲が多いですし、アレンジも光っていますのでお薦めです。

いしだあゆみさんには、CD化されていないと思いますが1981年にアルファ・レコードから
有賀恒夫氏のプロデュースで『いしだあゆみ』という結構良いアルバムをリリースしているんですよ。
佐藤健さん、滝沢洋一さん等が曲を書き、ユーミンと岩谷時子さんが詞を書いています。
アレンジは井上鑑氏がメインで、バックはパラシュートの面々という豪華なものでした。
ベテランにしか出せない雰囲気と世界観がなかなか良かったです。
歌謡曲という捉え方であれば、オーケストラのバックというのも確かに有りだなと思いますが、
若いのに結構渋い趣味ですよね(笑)